レースで“BMW”の名を轟かせるために生まれた初代「M3」はサーキットで熱く日常ではジェントルだった

BMW M3

日常走行もジェントルにこなす

M3は、1987年のWTC（世界ツーリングカー選手権）から実戦に参戦し、見事にチャンピオンを獲得した。1987年からはWTCが消滅したため、ETC（欧州ツーリングカー選手権）とDTM（ドイツツーリングカー選手権）にその活躍の場を移し、さらに勝利の数を積み上げた。M3は幾多のライバルを明らかに凌いだ世界最強のツーリングカーとしてサーキットに君臨した。

その走りは、公道でもホットなものだった。BMWらしくすべてがハイクオリティに仕上げられ、モータースポーツ用マシンらしいホットな側面と、入念な作り込みを感じるクールな側面を同時に味わえるのが特徴だった。

エンジン回転を4000rpm以下に抑えたジェントルな走りでは、各部の精度の高さでドライバーを魅了した。通常のシティユースを無難にこなすツーリングカーとして魅力的だった。

だが、ひとたびオープンロードで7000rpmオーバーまでエンジンの持てるポテンシャルをフルに引き出すと、生粋の狼の顔でドライバーを虜にした。

次々と迫りくるコーナーを官能的なエンジン音をBGMにクリアする至福の一瞬。回すほどにシャープなエンジン、そしてパワーゾーンを外すことのないクロースレシオ設定の5MT。圧倒的に高いロードホールディングを見せる足回りとタフなブレーキ、すべての要素が速さへと帰結していた。しかもそれが実にFunだったのがM3の勲章だった。