今から10年前の2011年に初代が登場し、2017年に現行型となる2代目にフルモデルチェンジしたホンダN-BOX。販売台数ランキングで無類の強さを発揮し、軽自動車だけでなく小型/普通車を合計した総合ランキングでもたびたび首位を獲得している。なぜN-BOXは並みいるライバルを蹴散らして売れ続けているのか? その強さの根本的な理由はなにか? 本稿で分析していただいた。
文/渡辺陽一郎
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【画像ギャラリー】激戦!! 首位を快走するN-BOX撮りおろし写真と強力ライバルたち
■車内の広さはクラス最大級
ベストセラーカーは時代に応じて変わるが、今の日本国内で最も多く販売されている車種はホンダのN-BOXだ。現行型は2代目だが、2011年に登場した先代(初代)モデルから人気が高かった。
現行型(2代目)N-BOX。登場は2017年8月
先代モデルは、2013年/2015年/2016年に軽自動車の販売台数第1位になっている。2代目の現行型はさらに好調で、2017年から2019年まで、軽自動車と小型/普通車を合計した国内販売の総合1位になった。
2020年は軽自動車の1位がN-BOX、小型/普通車まで含めた総合1位はヤリスになりそうだが、この順位には注意が必要だ。日本自動車販売協会連合会が集計するヤリスの登録台数は、「ヤリス+ヤリスクロス+GRヤリス」を合計した数字になるからだ。そのためにヤリスクロスが発売された後の2020年9月以降、ヤリスの登録台数が急増してN-BOXを上まわり、国内販売の総合1位になった。
一般的な認識として、ヤリスとヤリスクロスは別のクルマだ。エンジンやプラットフォームは共通でも、外観は大幅に異なる。全幅もヤリスは5ナンバーサイズだが、ヤリスクロスは少しワイドで3ナンバー車になる。そこでヤリスクロスの登録台数(2020年9月:約6700台・10月:6900台・11月:1万台)をヤリスから差し引くと、今でもN-BOXが国内販売の総合1位になる。
■先代から継承した「広さ」
それにしてもなぜN-NBOXは、国内販売の総合1位を守り、タント、スペーシア、ルークスなどのライバル車は対抗できないのか。背景には複数の理由がある。
まずN-BOXの高い商品力だ。これは先代型によるところが大きい。先代N-BOXは、現行型と同じく全高は1700mmを上まわり、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も2520mmに達していた。外観はステップワゴンのようなミニバン風で、存在感が強く、軽自動車とは思えなかった。
初代N-BOXは2011年11月発表
車内の広さも前輪駆動の軽自動車では最大で、大人4名がゆったりと快適に乗車できる。後席を畳むと大容量の荷室になり、燃料タンクを前席の下に搭載したから床が低い。自転車を積む時も、前輪を大きく持ち上げる必要はない。スライドドアの開口幅は、現行型と同じ640mmとワイドだから乗降性も良かった。
このように先代N-BOXには、現行型と同様の充実した機能が備わる。初めて見た人は、その広さと使い勝手に驚いた。自分に必要か否かは別にして、購買意欲を刺激され、先代N-BOXは売れ行きを伸ばした。
■2代目になってさらに洗練された
そして2017年に発売された2代目の現行型は、先代型を踏襲した上で、さらに機能を洗練させた。
プラットフォームを刷新して走行安定性と乗り心地を向上させ、操舵感の曖昧さも払拭した。内装ではインパネ周辺が上質になり、シートの柔軟性も増している。このシートも乗り心地に優れた効果を与えた。
広大な室内を持つN-BOX。軽自動車のため4人乗りだが、室内空間の広さは圧巻
装備では衝突被害軽減ブレーキの性能が高まり、車間距離を自動制御しながら追従走行できるクルーズコントロールなどの運転支援機能も加えた。現行型は売れ筋路線の先代型に、新たな魅力を上乗せして、売れ行きをますます伸ばした。
そしてN-BOXの販売推移を見ると、好調に売れる定番のパターンに沿っている。2012年の届け出台数は21万台だが、2013年には23.5万台に増え、2代目にフルモデルチェンジされた後、2018年は24万台、2019年には25万台を超えている。
一般的にクルマの売れ行きは、登場した直後が最も多いが、N-BOXは時間の経過とともに少しずつ増えている。
これは街中でN-BOXを見かけた人達が魅力を感じて買うことにより、市場へ着実に浸透している証だ。入念に足場を固めるように売れているから、この後に時間が経過しても、売れ行きが下がりにくい。ワゴンRなども同じような売れ方を経て市場に根付いた。
N-BOXでは潜在的なユーザーが多いことも良い影響を与えた。ホンダには、フィット、フリード、ステップワゴンなどを所有するファミリーユーザーが多いから、子育てを終えて小さなクルマに乗り替えるニーズも高い。しかもホンダの軽乗用車は、実質的にN-BOX/N-WGN/N-ONEに限られるため、小さなクルマに乗り替える需要がN-BOXに集中した。現行型の人気に関しては、先代型が好調に売れた影響も大きい。先代型から現行型に乗り替える需要が売れ行きを押し上げた。
登場後3年半が経過しても売れまくっている現行型N-BOX。その要因は商品力だけでなく、さまざまな好条件が重なり合った結果だし、(フィットなど)小型車の販売が伸び悩むなどの弊害もある
その代わり、N-BOXがほかのホンダ車の売れ行きに与えた影響も小さくない。フィットの登録台数はヤリスを下まわり、フリードもシエンタにおよばない。N-BOXは、好調に売れながら、ほかのホンダ車の需要を吸収しているわけだ。その結果、N-BOXは、2020年に国内で販売されたホンダ車の32%を占めている。
1車種がメーカー全体の30%を超えるとリスクも高まる。なんらかの理由でN-BOXの生産が滞ると、国内に供給されるホンダ車が大幅に減るからだ。ホンダの販売店からは「N-BOXにはあまり力を入れず、フィット、フリード、ステップワゴン、ヴェゼルを売るように指示されている」という話も聞かれる。
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■続々と登場する各社のライバルたち
一方ライバル車のタント、スペーシア、ルークス、eKスペース&eKクロススペースがN-BOXのように売れない理由は何か。
まず挙げられるのは商品力だ。タントは現行型になり、先代型の欠点だった後席の座り心地と着座姿勢、走行安定性、操舵感などを改善した。助手席には長い前後スライド機能を加え、車内の移動も容易にしている。
元祖スーパーハイトワゴンのダイハツタント。現行型は4代目にあたり、2019年に登場している。N-BOXと比べても商品内容はほぼ変わらないはずだが…
タントは以前から左側のピラー(柱)をスライドドアに内蔵させ、前後のドアを両方ともに開くと開口幅が1490mmに達した。新型ではワイドな開口幅を生かして助手席側からベビーカーと一緒に車内へ入り、後席のチャイルドシートに座らせる。この後、降車しないで運転席に座れるように、運転席にも長いスライド機能を採用した。車内の移動性と、導線に力を入れたわけだ。
しかし現行タントは全般的に地味だ。
機能的にはN-BOXに比べて大きく劣る部分はなく、ワイドに開く左側のスライドドア、多彩なシートアレンジなどはタントの優位点になる。それでも売れ行きは伸び悩み「乗ると良いクルマ」になっている。
またダイハツでは、2016年に登場したムーヴキャンバスが売れ行きを伸ばしている。全高が1700mm以下の軽自動車だが、後席側のドアはタントと同様のスライド式で、外観も上質だ。販売店によると「ムーヴキャンバスは、スライドドアは欲しいが、タントほどの広い室内空間は不要なお客様に好評」という。
全国軽自動車協会連合会の販売統計では、ムーヴキャンバスの届け出台数はムーヴに含まれるが、別々に算出すると約半数を占める。そうなるとコロナ禍の影響を受ける前の2019年には、1か月平均で約5000台のムーヴキャンバスが届け出されていた。この売れ行きがタントの需要を吸収した面もある。このほかダイハツにはSUV風のタフトも用意され、複数の軽自動車によってタントの需要が分散された。
スペーシアもタントと同等の台数を届け出した。車両重量はN-BOXやタントよりも少し軽く、マイルドハイブリッドも搭載する。アイドリングストップの再始動音も静かだ。エアコンの冷気を後席に送るスリムサーキュレーターも以前から採用されて快適性が高く、メカニズムや装備を充実させた。ボディのバリエーションにはスペーシアギアも設定され、標準ボディ、カスタムと併せて3種類の選択肢がある。それでも売れ行きはN-BOXにかなわない。
このほかルークス/eKスペース&eKクロススペースは、衝突被害軽減ブレーキを充実させた。2台先の車両を検知して警報する機能もある。全車速追従型クルーズコントロールを含んだ運転支援機能のプロパイロットも採用したが、売れ行きは伸びない。
■ホンダN-BOX最大の強みは「分かりやすさ」
以上のようにN-BOXをライバル車と比べると、まずは特徴が分かりやすい。
外観はミニバン風で、車内は広く、自転車も積みやすい。内装は上質で、突き詰めれば「軽自動車に見えない」ことが人気の秘訣だ。
しかもダイハツやスズキと違って(ホンダは軽の)車種数が比較的少なく、そのいっぽうでダウンサイジングの母体になる小型車は多いから、N-BOXは膨大な需要に恵まれて売れ行きを伸ばした。好条件が重なった結果ともいえるだろう。従ってフィットの伸び悩みなど、代償も小さくない。
N-BOXは多くのユーザーが使っている以上、優れた商品だ。
が、車両本体の実力だけで売れているわけではない。購入時には、ライバル車のタント、スペーシア、ルークスなどもチェックした上で結論を出したい。
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