最近、ATやCVTのシフトレバーも進化してきて、これまでのようなシフトレバーではなく、ゲーム機のジョイスティックのようなタイプ、あるいはスイッチ式やボタン式、ダイヤル式のシフトが登場してきた。
昭和のアナログ世代にとっては、「今のシフトレバーの形でいいじゃないか、変える必要があるのか!」と戸惑っている人もいるかもしれない。
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2022年初頭にも発表予定の新型ステップワゴンにもボタン式シフトスイッチが採用されている。
そこで、こうしたスイッチ式シフトの採用はなぜ増えつつあるのか、どんなモデルに採用されているのか、解説していこう。
文/岩尾信哉
写真/トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、スバル、スズキ、ダイハツ
[gallink]
■スイッチ式シフトレバーの強みと弱点
3代目プリウスのシフトレバーはこのシフトを見ただけではこのポジションにあるのかわからないが、メーター内で確認できる。PからR、N、Dにシフトする際にはブレーキを踏まないと変わらないが、NからR、Dにシフトする時はブレーキを踏まなくても変わる
現行プリウスのシフトレバー。基本的に先代モデルからの踏襲
まずは機能を簡単におさらいしておくと、シフトレバーの操作によって電気信号をECUなどを介してトランスミッションに送り、アクチュエーターを作動させて変速制御するというのが、スイッチ式シフトレバーの成り立ちとなる。ここからは「スイッチ式シフトレバー」に呼び方を統一して説明していこう。
レバーの操作によるシフトポジションの変更は上下左右にレバーを動かして実施する。選択操作後にはレバーは物理的な中立位置に戻るパターンを採る。デメリットとしては、シフト位置の確認やブラインド操作がしにくいことが挙げられるが、後述するようにP(パーキング)ポジションなどをボタン式としている場合も多い。
具体例としては、日本メーカーではトヨタが2003年に初めて2代目プリウスから採用したことはよく知られるとおり。ハイブリッド仕様を中心に設定を拡大していった。
いっぽう、日産は2010年発表の電気自動車(EV)であるリーフから“マウス型”シフトレバーなどと呼んで採用を開始。その後はハイブリッド仕様の「e-POWER」モデルに設定するなど、量産モデルでの採用が確実に広まりつつある。
現行モデルのリーフのシフト機構はシフトボタンで操作する。Pを起点に上からR-N-D/B。中央はeペダル、右はプロパイロットパーキングのスイッチ
まずは機能を簡単におさらいしておくと、シフトレバーの操作によって電気信号をECUなどを介してトランスミッションに送り、アクチュエーターを作動させて変速制御するというのが、スイッチ式シフトレバーの成り立ちとなる。ここからは「スイッチ式シフトレバー」に呼び方を統一して説明していこう。
レバーの操作によるシフトポジションの変更は上下左右にレバーを動かして実施する。選択操作後にはレバーは物理的な中立位置に戻るパターンを採る。デメリットとしては、シフト位置の確認やブラインド操作がしにくいことが挙げられるが、後述するようにP(パーキング)ポジションなどをボタン式としている場合も多い。
具体例としては、日本メーカーではトヨタが2003年に初めて2代目プリウスから採用したことはよく知られるとおり。ハイブリッド仕様を中心に設定を拡大していった。
いっぽう、日産は2010年発表の電気自動車(EV)であるリーフから“マウス型”シフトレバーなどと呼んで採用を開始。その後はハイブリッド仕様の「e-POWER」モデルに設定するなど、量産モデルでの採用が確実に広まりつつある。
2021年7月に発売開始した2代目アクア
新型アクアは、新たにスイッチ式シフトレバーによるインパネシフトを採用した
■大幅に小型化されたゴルフの電制シフトレバー
2019年10月に欧州で発表され、8代目となった新型ゴルフが日本市場で発売されたのは2021年6月。世界的なコロナ禍や半導体不足など、様々な影響があったとはいえ、ようやく日本市場に導入された。
新型の変化は先代から導入を開始、8代目の新型の設計段階からパワートレインを含めて全面的に採用されたMQBプラットフォームの存在が大きい。
インテリアデザインへの影響については、デュアルクラッチトランスミッション(DCT、VWではDSGと呼ばれる)が「バイ・ワイヤ化」されたことで、シフトレバーが先代よりも大幅に小型化されたことが際立っている。
レバー式からの変更が従来のユーザーに扱いやすさの面で受け入れやすいかどうかはさておき(センターコンソールに配置したことは従来のユーザーへの配慮といえる)、見た目には「進化した」といえる。
2021年6月に日本に導入された8代目VWゴルフ
フェラーリのF1マチックのように極端に小さくはなっていないが肉食恐竜の前足が退化したような印象を受ける8代目ゴルフのシフトレバー。変速機構のシフト・バイ・ワイヤ化を受けてシフトレバーが大幅に小型化
■スイッチ式シフトレバーを巡るそれぞれの事情
最近の例をもう少し挙げてみると、2021年6月にワールドプレミアとして発表された新型レクサスNXは、スイッチ式シフトレバー(レクサスでは「ドライブモードセレクトスイッチ」と呼ばれる)が採用された。
パワーユニットとして2.4L、直4ターボとハイブリッド用2.5L、直4の2種のガソリンエンジンを与えたうえでスイッチ式シフトレバーを装備。インテリアでは、14インチ・タッチワイドディスプレイが幅を利かせているのはもはや珍しくなくなっている。
プレミアムブランドとしてのレクサスはスイッチ式シフトレバーの導入に積極的であり、新型NXでも採用している
NXのトランスミッションはシフト・バイ・ワイヤによって実現。上からP-N-R-D、S。アクアではBの部分がNXではSになっている
ちなみにレクサスはスイッチ式シフトレバーを積極的に採用してきたが、ハイブリッド仕様でもレバー式を採用する数少ないモデルであるESでは、レクサスの主なマーケットである北米市場での保守的なユーザーを気遣ったかのような設定とされている。
日産が2021年6月に発表したオーラやベースとなるノートは、パワートレインが「e-POWER」のシリーズ式ハイブリッドのみの設定とされている。
オーラではスタイリッシュなデザインが施されたスイッチ式シフトレバーが採用された。日産はPポジションをボタンとしてレバーに設えている。
日産オーラはベースとなるノートとともに、「e-POWER」というシリーズ式ハイブリッドを搭載
日産ノートオーラのシフトレバー
日産オーラはベースとなるノートとともに、「e-POWER」のシリーズ式ハイブリッドモデルとして、洒落たデザインのスイッチ式シフトレバーを採用する。
他の日本メーカーについては、コスト面も含めて導入には慎重な姿勢を採っているとはいえ、マツダはMX-30で同社初のスイッチ式シフトレバーを採用。EVをラインナップする先進性とインテリアデザインへのこだわりが表れている。
マイルドハイブリッドとEVをラインナップするマツダMX-30
マツダMX-30でもマツダ初のスイッチ式シフトレバーを採用。デザイン性の向上とともに、EVへの対応を含む設定といえる
■好感が持てるホンダのボタン式
ある意味でシフト機構の設計で独自路線を行くホンダが2021年8月に日本発売した新型シビックは、フィット、ヴェゼル同様のオーソドックスなレバー式を採用したのが興味深い。新型シビックでは6速MTを設定していることが影響しているのだろうか。
いっぽうでホンダは周知の通り、日本市場ではハイブリッド仕様のみのセダンであるアコードやレジェンドといった上級車種、そして2022年初頭に発表予定の新型ステップワゴンに「エレクトリックギアセレクター」と呼ばれるボタン式シフトスイッチを使用している。使用頻度が限られているP-R-Nなどのポジション選択をボタン式として別立てにするのは合理的に思える。
2021年8月に発売された新型シビック
ホンダはレジェンドやアコードなどボタン式がメインだが、新型シビックではレバー式となった。マニュアルトランスミッションの設定とも関連があるはず
ティザー写真が公開され、2022年1月7日にジャパンプレミアとなる新型ステップワゴン
新型ステップワゴンのコクピット。アコードハイブリッドやCR-Vハイブリッドと同じようなスイッチ式
こちらはCR-Vハイブリッドのシフトスイッチ
■一歩進んだ輸入車勢
いっぽう、輸入車にはメーカー、ブランドとして個性を主張すべく、他の電子式シフトシステムの採用が見られるので、かいつまんで触れておこう。
ドイツのプレミアムブランドは概ねフロアに設置するスイッチ式シフトレバーを採用していても、極端に小型化したデザインは採っていないのは、操作性を重視したドイツ流本来のコンサバティブなデザイン手法(ディスプレイの利用についてはむしろ大胆とも言えるが)といえるかもしれない。
従来はメルセデスベンツのコラム式シフトレバーと組み合わされた「コマンドシステム」、BMWのi-Drive「タッチコマンド」、アウディのダイヤル選択式「MMI」などがあるが、最近ではタッチパネルでの入力機能を合わせて採用することが多く、スイッチ式シフトレバーとタッチパネル式の大型スクリーンといった組み合わせに移行しつつある。
アウディQ5スポーツバック
アウディQ5スポーツバックでは従来のスイッチ式シフトレバーと10.1インチのタッチパネル型センタースクリーンを採用
さらに多くの最新スポーツカーを見てみると、そのほとんどがタイトに仕立てられたコクピットゆえに限られたスペースなどに考慮して(マニュアルトランスミッションの設定が減少傾向にあることもあるはず)、ボタン+パドルシフト型が主流になっている。
ルノーグループ傘下のスポーツカーブランドであるアルピーヌが手がけるA110の変速機構はシンプルなボタン式を採用する。
ルノーアルピーヌA110S
極めてシンプルなA110のボタン式のシフトスイッチ。あとはパドルシフトでシフトチェンジを楽しんでくれという潔さ
新型ランドローバーディフェンダー110
インパネシフトのシフトレバーを採用する新型ランドローバーディフェンダー
ある意味で特異な例といえるのが、ジャガー・ランドローバーに違いない。ジャガーはセダン系をポップアップ式ダイヤル(回転)型スイッチによるポジション選択を基本とするいっぽうで、SUV(EVのi-ペイスはボタン式)やクーペではスイッチ式シフトレバーを採用する。
対してランドローバーは、トップモデルのレンジローバーがダイヤル式ながら、他の前輪駆動を基本とするモデルではフロアシフトのスイッチ式を採用。最新モデルのディフェンダーではインパネシフトのスイッチ式シフトレバーとしている。
XJシリーズのシフトチェンジはダイヤル式
■電動化技術ともに進む採用拡大
スイッチ式シフトレバーは、現状ではどちらかといえば機能の向上よりも、デザイン上の高級感あるいは先進性を演出する要素が多いように思える。デザイナーの意図という見た目の良さと使い勝手という利便性の両立はそう簡単ではなさそうだ。
シフト操作に慣れを必要とするが、慣れれば問題ないとしていいのだろうか? 特に高齢者は、反射神経が鈍くなり、とっさの判断ミスでシフトチェンジの誤操作、誤発進はやはり心配だ。昔ながらのシフトレバーに回帰するべきではないか、と思うのだがいかがだろうか?
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