F12ベルリネッタで箱根へドライブ<前編>
掲載 更新 carview! 文:吉田 匠/写真:菊池 貴之
掲載 更新 carview! 文:吉田 匠/写真:菊池 貴之
首都高から東名に。ボンネットに収まる65度4カムV12は、6262ccの排気量から自然吸気のまま740ps/8250rpmと690Nm/6000rpmを絞り出し、7段デュアルクラッチF1ギアボックスを介して、排気量の割に軽い1525kgの車重を100km/hまで3.1秒、200km/hまで8.5秒で加速させる。さらに、そのまま踏み続ければ340km/h以上のトップスピードに達するとされるクルマだから、高速クルージングは最も得意とする分野のひとつだ。
そんな高性能車を日本の高速道路に走らせる際に必要なのは、それなりの腕と強い自制心だろう。ちなみにメーターの100km/hはトップ7速で2100rpmにすぎず、エンジンは軽く唸りながら惰眠をむさぼっている。仮のそのままレヴリミットの8500rpmまで回すとすると、スピードは400km/hを軽く超えてしまう計算になるから、7速はあくまでクルージングギアであることが分かる。つまり最高速をマークするのは6速の役目なのだ。
大井松田‐御殿場間の右ルートに至ったところで、ちょっと自制心を解き放ってみた。低いギアを選んでスロットルを深く踏み込むと、フェラーリV12はあくまでスムーズに、しかし突き刺さるようにシャープに回転を上げて、8500rpmからのレッドゾーンに軽々と飛び込んでいく。それに呼応してコクピットは得もいわれぬシンフォニーに満たされるが、なかでも特に7000rpmを超えるあたりから上のクライマックスの叫びは刺激的ではあるけれど断じて耳障りではなく、脳天が蕩けそうになるほど甘美なものだ。458やカリフォルニアのV8も素晴らしいフェラーリミュージックを奏でるが、やはりV12の方が音質が一段と繊細で艶やかであることを、五感をとおして認識させられた。
だから、その快音に包まれながらピニンファリーナボディを自在に加速させ、明確な横Gと後輪が路面を蹴る感触を腰で感じながら高速コーナーの連続を駆ける右ルートのドライビングは、クルマが込んでさえいなければ至福の時間をもたらしてくれる。で、その余韻に浸りながらスロットルを絞るとそこはもう御殿場、ゆく手に待つのは箱根である。
<後編に続く>
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