ビッグマイチェンしたA4 変更点と進化の度合い
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:篠原 晃一
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:篠原 晃一
試乗したのは2.0 TFSIクワトロのSライン。配付された資料を読むかぎり、燃費向上対策以外のハードウェア変更はないようだ。しかしシートに収まり、エンジンをかけた瞬間に「あれっ?」と感じ、走り出すと予感は確信へと変わった。静粛性がはっきりと体感できるほどに向上しているのだ。過去の記憶との比較ですら違いがわかったのだから、マイナーチェンジ前のA4に乗っている人が試乗したら、一瞬で違いを見抜くに違いない。
アウディジャパン側も「静粛性が向上した」という事実は認識しているが、なぜ静かになったかの原因は特定できていないという。もっともこれは欧州車にはよくあることで、いわゆる「熟成」というやつ。具体的にはエンジンルームと室内を隔てる壁の穴埋め&隙間詰めの徹底化や、遮音材や防音材の追加もしくは配置の最適化等を行ったのだろう。
乗り心地の洗練度も高まった。Sラインは高性能バージョンのS4と同じ245/40R18サイズのタイヤを履いているが、路面への当たりはあくまで滑らか。以前はノーマルの17インチタイヤでも路面によっては硬さが表面に出て、できれば可変ダンパーを含む「アウディ・ドライブ・セレクト」をチョイスしたいなと思わせたが、新型であれば標準サスペンションのままでも十分快適だ。電動パワーステアリングのフィーリングも上々。油圧式よりもアシスト量の変化幅が大きくなり、街乗りではより軽く、速度を上げたときの手応えはよりしっかりした。変化幅をもう少し控えめにしたほうがいいと感じる人もいるかもしれないが、違和感を覚えるのは最初のうちだけで、慣れれば気にならなくなる。少なくとも僕はそうだった。
211ps/350Nmという出力を発生する2L直4ターボは約1.6トンのボディを軽快に走らせる。澄んだサウンド、スムースな回転フィールに加え、デュアルクラッチ方式を採用したSトロニックが生みだす小気味よい変速マナーは、ドライバーの求めに応じて滑らかな走りからスポーティーな走りまでをカバーする。今回はFF+CVT仕様には試乗できなかったが、ドライビングを心ゆくまで楽しみたいなら7速Sトロニックを組み合わせるクワトロが有利だろう。ただし価格差は80万円以上あるが。
今回新型A4に乗って感じたのは、登場から4年経ってもその商品力は衰えるどころかますます高まっているということ。もちろん工業製品である以上、手を加えなければ陳腐化は避けられない。しかし、真心を込めてきちんと育てれば、年月の経過は熟成度という新しい魅力を生みだす。メイクを変え、中身の成長も遂げたA4は、いまがいちばんの買い時なのかもしれない。昨年ビッグマイナーチェンジを受けたメルセデス・ベンツのCクラス、今年フルモデルチェンジしたBMW3シリーズとの三つ巴の戦いはさらに激しさを増しそうだ。
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