SLS AMG 国内試乗記 AMGの悲願が叶うとき
掲載 更新 carview! 文:河口 まなぶ/写真:篠原 晃一
掲載 更新 carview! 文:河口 まなぶ/写真:篠原 晃一
リモコンキーでロックを解除すると、ボディサイドの低い位置に格納されたドアノブが電動でせり出してくる。それをつかみ、引く。
“カチッ”と耳に届く開閉音は明らかにスチールのそれとは異なるアルミの響き。事実手のひらに伝わるドアの感触も鉄とは異なる軽さを伴っており、そこから手を離せばダンパーの力だけで、大空に翼を広げる。
右足から入って右手をステアリングにおき、スッと身体を一瞬浮かせながら左手でドアノブをつかみつつ左足を収め、その勢いのままドアを閉める。するとドライバーは地上から40cmに満たない低い位置に腰を据えることになる。これだけで既に非日常的だが、さらに目の前には未曾有ともいえるロングノーズがどーんと鎮座する。そこに圧倒的な爆発力を生む源が据え置かれているのだと思うと、目に見える以上にノーズは長く、重いように思えてくる。
センターコンソールに置いた右手のすぐ横にエンジン・スタート/ストップのボタン。人差し指で押すと電気的にオンとなるため押し続ける必要はない。そしてボタンそのものが赤く点滅を始めると同時に、これから始まる極上のエンターテイメントを予感させるクランキングの後、指揮者のタクトが振りかざされるようなタイミングで、6.2リッターのV8は文字通り、盛大な爆発を始める。刹那、腹の底に響くエグゾーストが末端の毛細血管までを揺らし痺れさせていく。
シフトノブをDに入れ、スロットルを踏みつける…自分の腰の後ろで巨大な力がタイヤを路面へ押し付けようとするが、押し付けきれずに暴れそうになるのをシートから感じる。それをステアリングとペダルでわずかに修正しつつさらにスロットルを踏み込む…するとそこからSLS AMGとの一大スペクタクルが始まる。
回転が上がり、加速の伸びが訪れる。それは最近の環境対応エンジンでは決して感じられない、回転の上昇に連れて強烈に伸び上がるもの。この世におけるもっともリアルなワープが、始まる。
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