マツダSKY特集・第2弾 技術トピック一気に解説
掲載 更新 carview! 文:伏木 悦郎/写真:マツダ、伏木 悦郎
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SKY-Gで明らかにされたディテールは多岐にわたる。そのスタートラインに位置するのは、やはり14:1というプラグ点火のガソリンエンジン(GE)としては限界といわれる高圧縮比の採用だろう。
圧縮比を上げればエネルギー効率が高まり、燃費は飛躍的に向上する。このことは、高圧縮比による発熱を利用して軽油を自己着火させるディーゼルエンジン(DE)の効率の良さを通してよく語られることだが、これまでの高圧縮比化は、主にガソリンの高オクタン価化という燃料供給メーカーの業績に負うところが多く、エンジンの側からDEに迫るような高圧縮比の追求に着手する者はなかった。余談ながら、SKY-Gの圧縮比14はドイツなどで供給される95RON(Research Octane Number=リサーチ法によるオクタン価)のレギュラーガソリンを前提にした数値で、日本の91RONレギュラーでは圧縮比は13になるという。
では、どのようにして14という高圧縮比は実現されたのだろう。まず注目すべきはエンジンのキャラクターを決めるボア×ストロークだ。SKY-Gのそれは83.5×91.2mmの1998ccで、現行の2リッターPFI(ポートインジェクション)のボア×ストローク87.5cc×83.1mm(圧縮比は10:1)というショートストロークタイプから、スモールボアのロングストロークタイプへと転換された。主な目的は、小径ボアでピストン上面の面積を小さくして冷却損失を改善することにあるのだが、これに加えて耐ノック性を向上させるピストン頭頂形状を採用し、圧縮比上昇に耐える基礎的条件を整えた。
だが最も注目すべきは、ノッキング発生の最大要因とされる圧縮温度を高めてしまう高温残留ガスの処理だ。排気行程で燃焼室に残留するこの高圧残留ガスを半減させれば、圧縮比を「3」高めても圧縮上死点温度は変わらないという。そして直噴による気化潜熱による冷却効果で、さらに「1」圧縮比を上げられる。
そこで採用されたのが4-2-1の排気マニホールド、ホンダのシビックタイプRなどでも用いられたいわゆる「タコ足」だ。互いに関係し合うシリンダーへの排気干渉をマニホールドを長くして抑えるとともに、バルブオーバーラップを大きく取ることで掃気効果を高める。タコ足は以前からスポーツ系のNAガソリンエンジンの高性能化には欠かすことのできないアイテムだったが、実は大きな問題がある。
近年厳しさを増すいっぽうの排ガス規制は、冷間始動時のエミッション(HCやCO)の除去が大命題となっている。少しでも触媒を早く温めるため、エンジン近傍に取り付けるのが一般的な方法だが、これにタコ足は馴染まない。BMWのように2段に分けて2つの触媒で切り抜けようとしている例もあるが、コストと効果の両面で諦めるのが大勢だ。従来型の高性能スポーツがばたばたと倒れている理由がここにあるわけだが、SKY-Gにはこのタコ足を成立させる画期的な機構が“もうひと手間”という感じで用意されているのだった。
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