SL63 AMG×清水和夫 アドレナリンと子守唄？

エンジンはアドレナリン、サスペンションは子守歌

たとえAMGであってもメルセデスの一員なので、そのコアコンピタンスは明白で安全性と快適性だ。この二つの機能はメルセデスの普遍性と言える。

タイヤは前後19インチが標準だが、オプションでリヤに20インチの30扁平も用意されている。しかし、ABCというユニークな油圧アクティブサスペンションを持つSL63には、快適性ではポルシェやフェラーリも敵わない。油圧でサスペンションを完全に制御するので、文字通り動物のように柔軟な脚の動きが可能だ。サーキットから街乗りまで本当にサスペンションは気持ちが良い。エンジンはアドレナリンを出させるが、サスペンションは子守歌が聞こえてくる感じだ。

安全性はどうか。SLのようなスポーツカーにとって、カントリー路を走っているときに頻繁に変わる制限速度はわずらわしいものだ。そんな時、カメラで標識を自動的に読み取る「スピードリミットアシスト」はうれしい機能だ。車線も認識するので、逸脱しそうになると警報が鳴り、そのあとはESPのブレーキを使って元のレーンに戻してくれる。前方はミリ波レーダーで障害物を認識しているので、追突防止＆被害低減も可能だ。

ブレーキはカーボンでもスティールでも利きが良く、高速でも安定している。しかしメルセデスの場合、私の経験ではブレーキでホイールが汚れやすいのでカーボンコンポジットブレーキをお勧めしたい。汚れが激減するはずだ。

そうそう、SLはオープンカーだったことをつい忘れてしまった。それだけパフォーマンスが高くルーフを閉めて使っているとポルシェターボやフェラーリと比べたくなるのだ。新しいSLはもちろん、オープンでも風の巻き込みが少なく、快適なオープンドライブが可能である。SLはゴルフバックこそ入らないが、色々な走りのスタイルに答えてくれそうだ。