新型シビックタイプRに試乗。バランスの良さと高い完成度、ドライバー中心の”ホンダスポーツ”の真髄が詰まっていた
掲載 carview! 文:編集部/写真:市 健治 130
掲載 carview! 文:編集部/写真:市 健治 130
試乗を終え、ヘルメットを脱ぎ汗を拭いながら襲ってくるのは強烈な多幸感だった。ナイフエッジぎりぎりを攻めるヒリヒリとした緊張感ではなく、限界を探りながらクルマと対話する、まさにこれぞスポーツドライビング。
これは、新型シビックタイプRのバランスの良さと完成度の高さからくるのだろう。フラットなエンジン特性、ニュートラルなステアフィール、広い視界と操作しやすいシフト系……その全てがドライビングに没頭できるノイズレスな環境づくりのためにあるのだと感じた。
この没頭できる環境こそが冒頭の「Comfort!」なのだ。(セナの真意は定かではないが)それは単に”快適”という意味ではなく、”心地良い”という意味でのコンフォート。余計な気を使わずにクルマとの対話に没頭して初めて享受できる"優しい"ドライビングプレジャーこそ、人を中心としたホンダスポーツの真髄だ。
開発責任者の柿沼秀樹氏は「過去のタイプRの歴史を守るのではなく、これからの時代にあるべきスポーツカーを思い描き、タイプRの新しい歴史を作るべく開発を実行した」と話してくれたが、そこには「NSX」などに代表されるホンダスポーツの熱き血潮がたぎっていた。
新型シビックタイプRは、スポーツドライビングを愛する多くの乗り手に心地良いドライビングプレジャーを提供してくれるだろう。現に納車待ちは1年とも2年とも言われ、市場からも高く評価されている。
あえて注文を付けるならば、およそ500万円という絶対的な値段の高さと、265サイズのタイヤを含めた維持費の高さが懸念となる。
ホンダスポーツの頂点としてクルマの完成度は確かに素晴らしく、開発陣もやり切った感がそれなりにあるだろう。しかし”やり切った”ではなく”やり過ぎ”と感じたのもまた事実。なぜならば、そのドライビングプレジャーを多くの人が享受できることこそ、ユーザーがホンダに望むことなのだから。
果たして新型シビックタイプRは、本当に”市民の”ためのタイプRなのだろうか。コストパフォーマンスは十二分に高いが、絶対値としてあと100万円安ければ……と思ってしまうのは筆者だけでないはずだ。ラインアップとして300万円代で「フィットタイプR」でもあれば話は別だが。
最も「ピュアエンジン・タイプRの集大成」とホンダが発していることからも、次期シビックタイプRは何らかのモーターとバッテリーを搭載したハイブリッドモデルとなるのだろう。そうなれば更に価格が上がることは必定。あの時買っておけばよかった……と後悔しても後の祭りだからスポーツカー選びは悩ましい。
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