BMW M3…男は優しいだけでは生きられない
掲載 更新 carview! 文:小沢 コージ /写真:菊池 貴之
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本当のことを言うと私が新型M3に初めて乗ったのはドイツのアウトバーンだ。それだけにその実力は120%の輝きをもって受け入れられた。なぜならばそこはまさに戦場だからだ。日本の様に歪められ、虚勢された“戦えない戦場”ではなく、速いもの=勝ち、遅いもの=負けのような極端な世界。ここならばM3の存在意義はすべて発揮でき、すべて肯定される。
とはいえM3は昔ほどの“羊の皮を被ったオオカミ”ではない。かなりわかりやすく“オオカミ”だ。タイヤは前後とも245/40R18の極太サイズで見る人が見れば、スポーツモデルであることは一目瞭然。さらに専用のブリスターフェンダーにバンパー、エアインテークが2つ空いたかなりマッチョめのエアロパーツまで備わっている。しかし、リアパネルは基本的にはノーマル同様であまりクルマに興味の無い人にはやはり普通のセダンに見えてしまうだろう。この辺はやはり羊っぽい。
だが、エンジンをかけた瞬間、再び牙をのぞかせる。アイドリングから「フォン!」とやや管楽器のような甲高い乾いた音を響かせ、「なんだこれは?」感が漂う。ところが走り出せば、これまたあっけないほどにジェントル。アクセルをゆっくり踏み出すと、まさしくその動きに追従して、ゆっくり走り出す。しかもタコメーターみてるとエンジン回転2000rpmほどでどんどんと、しかも滑らかにシフトアップしてしまい、100キロ前後で7速に入ってしまう。
そして驚くのが、バケモノとも言えるこの4リッターV8が非常によくコントロールされていることで、7速2500rpmぐらいでアクセルを踏み込むとそこそこの加速が出来てしまう。この時点ではエンジンはそれなりに静かで、燃費もかなりいいだろう。さらに言うと乗り心地、操作性も拍子抜けするほどいい。基本的には堅めで、路面のいい道で時々小刻みにボディが上下したり、路面の継ぎ目で「ブチッ」とか「ドン」と衝撃が入ってはくるがそれだけで後は滑らか。ステアリングフィールも握りが気持ちやや太めなぐらいで、軽くナチュラル。まさしく普通のセダン並みの乗り味で、これなら助手席の奥さんや家族も大喜びだろう。
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