アウディA1スポーツバック 5ドア+気筒休止
掲載 更新 carview! 文:木村 好宏/写真:Kimura Office
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昨年、欧州を皮切りに世界市場で発売を開始したアウディA1はスタート時には高いハードルが待ち受けており販売台数が思うように伸びなかった。「まったく新しいセグメントへの挑戦にはこうした困難は付きまとうものだ。しかも最近の顧客は慎重で答えを簡単には出してくれない。」とシュタッドラー社長は昨年筆者に語っていた。そしてフタを開けて見れば昨年、結局11万8千台を販売、目標に到達したのである。3ドアという単一モデルとしては立派な数字である。
おそらく問題点は価格にあったのだと推測する。というのはドイツのメディアにはディーラー・インセンティブの導入によって期末までになんとか辻褄を付けたという報道が流されており、確かに年末に掛けて突然、路上で見かけるようになった。
ともあれ数字を達成したアウディはさらにA1に新たなバリエーションであるスポーツバックを投入する。昨年の東京モーターショーで世界初公開されたニュー・バリエーションは3ドアとほぼ同じサイズで、リアパッセンジャーのヘッドルームを確保するためにルーフの後方を僅かに持ち上げているだけだ。カタログデーターには幅が広がったと記載されているが、これはドアを24cm短くした時にもっともRの強い、すなわちもっとも出っ張っている部分にドアハンドルを付けた結果で室内幅には反映されていない。リアシートは2人乗りと3人乗り仕様が選択できる。またトランク容量は通常は270リッター、リアシートのバックレストを前方に畳むと920リッターになる。これは3ドアと全く同じ容量だ。
この5ドア・スポーツバックはドイツではすでに受注が始まっており価格は3ドアよりも850ユーロ(約8万5000円)高い。
スペインのジローナという観光地で開催された試乗会で選択したモデルは1.4TFSI、つまり4気筒ガソリン直噴ターボで最高出力は140ps/4500-6000rpm、最大トルク250mNは1500-3500rpmで発生する。組み合わされているトランスミッションはオプションの7速DSGである。このクルマを選んだ理由はCOE(シリンダー・オン・ディマーンド)が搭載されているからだ。このシステムはすでにアウディS8に装備されているのと機構的には同じ気筒休止システムで、モジュール構成なので4気筒にも転用可能なのだ。
作動はV8と全く同じでカムシャフトに巻かれたスリーブが移動して螺旋状の溝が現れ、これに沿ってバルブが空打ち状態になる。このシステムはクルマが一定速度で負荷の少ないクルージング状態になるとエンジン回転数が1400-4000rpmの間で2番と3番のシリンダーが休止する。この間にトルク発生は25-75Nmにドロップする。そしてパワーが必要になりスロットルを踏み込むとカムのスリーブが移動し、1番と4番シリンダーは13ないし36ミリセカンドの間に再び仕事を始める。この結果燃費はEUサイクルで100km走行あたり0.4リッターの燃料を節約することができると発表されている。またアイドリング・ストップとの組合せでは0.6リッターの節約となる。またアウディは平均時速50km/hでの低速走行では3速ないし4速で100kmあたり1リッターまで燃費が減少するポテンシャルを持っていると発表している。アウディでは今年半ばの発売までは「100kmあたり5リッター以下、二酸化炭素排出量は115g/km以下にはなるはずである」という表現をしている。つまりディーゼル並みの数値にしたいようだ。しかし価格はディーゼル並とは行かないようで予想価格はベース・モデルのアトラクションでも2万2000ユーロ(約220 万円)を超えそうである。つまりナビやレザーシートなどを注文すると300万円ラインに簡単に到達しそうである。
さて、注目の走りだがまずは驚くほどパワフルだった。ちょっとスロットルを踏み込んだだけでノーズがあらぬ方向へ向きそうになるほどのトルクステアでびっくりした。重量は1.2トンほどだから確かに速いのは当たり前。鋭い加速のお陰で流れの速いスペインの高速道路にも問題なく入り込めた。乗り心地はやや固めだが当たりはソフトで、さらに短いホイルベースにも関わらずピッチングも少ない。おそらく前後のオーバーハングが短いためだろう。
ところで肝心のCOD(シリンダー休止)だが、切り替えは確かに素早く、そしてスムースに行われるのでメーターの表示を見ないと分からないほどである。しかし4気筒から2気筒への切り替わりの後ではやはりパラレルツイン独特のバイブレーションが感じられる。まあ僅かなのでよほど慎重に耳を澄ませ、触覚を研ぎすまさなければ感じないので、そう大きな障害にはならないだろう。実はこのCOD4気筒エンジンでは高価なV8と違ってアクティブ・エンジン・マウントもそしてアクティブノイズ・キャンセレーション・システムも搭載されていないのである。この4気筒TFSIエンジンの躾け役は2マス・フライホイールと最適化された通常のエンジンマウントだけなのだ。
果たしてこれだけの効果でCOD付きのA1スポーツバックが選択されるかどうかは分からない。ちなみに後で143馬力+320Nmの2リッターTDIに試乗したがこれもとても速かった。しかもトルクステアはこちらの方はずっと弱かった。値段を考えればおそらくドイツではやはりディーゼルだろう。しかも燃費は5リッター/100kmなのだ。
ともあれアウディが展開しているCOD(シリンダー・オン・ディマーンド)は間違いなくVW系にも伝播してゆくに違いない。街中での50km/hあたりの中低速走行ではハイブリッドにひけを取らない燃費が得られるとなると日本車にとって、また厄介な存在となるに違いない。ドイツ・メーカーのアドバンテージがまた増えたことになる。
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