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911GT3 新ウイングで ダウンフォースは2倍増

粗くない乗り心地と文句なしのハンドリング

後期型GT3にはもうひとつ、走り出した途端に感じた前期型との違いがあった。GT3に電子制御ダンパーを備えるPASMが装着されたのは997前期型からだが、そのセッティングはかなり硬めで、特にイタリアで乗った初期モデルのサスペンションの硬さは半端ではなかった。どうやらその後、PASMの設定は変更されたらしく、日本に入ってきた前期型GT3の乗り心地は初期の試乗車ほど硬くなくなっていたが、後期型GT3の乗り心地はそれとはまた次元が違った。タイヤは前期型と同モデルたるミシュランパイロットスポーツカップ19インチの新仕様だが、後期型の乗り心地は明らかに角が丸く、舗装の継ぎ目などを越える際の突き上げも最小限に抑えられている。ホイールをセンターロックにしたことで、バネ下重量が軽減されているのも乗り心地に効いているはずだ。スポーツモードにすればそれなりに硬いが、ノーマルモードで走る限り日常的に乗っても不満のない乗り心地で、GT3≒スパルタン≒乗り心地が粗い、という方程式は新型には通用しない。

それでいて後期型997GT3、ハンドリングがまた素晴らしい。僕がまず感動したのはステアフィールで、決して重くないのに路面の感触を繊細に伝えるそれは、エアバッグがマストの近年のクルマとしてはほとんど望み得るベストの感触ではないか。さらにその、速すぎず遅すぎない絶妙のレスポンスを含めて、スポーツドライバーには文句なしのステアリングだろう。しかも、ジオメトリーを見直したというサスペンションがもたらすコーナーでの身のこなしも、後輪駆動911として非の打ち所のないものだった。ハイスピードに照準を合わせた高性能車の常で、タイトコーナーでは若干のアンダーステア傾向を見せるが、まさに前輪の命じるまま、事実上のニュートラルステアを保って思うがままに身をひるがえしていく中~高速コーナリングの、なんとまあ気持ちいいこと!

モータースポーツ仕様のPSMは、路面に不整のあるタイトベンドを踏みながら回っていくような状況では軽く作動することがあるが、ドライな公道上ではONにしたままでもテンションの高いドライビングに冷や水をかけるようなことは皆無だといえる。

高速でのダウンフォースが前期型の2倍以上に達したということの効果は、アウトバーンの速度無制限区間で遺憾なく発揮された。高速ベンドでメーターが250km/hを超えてなおも加速するGT3をバックミラーに捉えたフェラーリF360スパイダーが、しばしの抵抗ののち、観念したように追い越し車線をこちらに明け渡したのである。

先ごろ発表されたニューGT3のプライスは1712万円。決して安くはないが、こういう硬派な乗り物に素直に感情移入できる御仁には、それに相応しい価値を見い出せるクルマだろう。

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