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GT-R ドイツ試乗報告 スペックV&09モデル

「ね、インチキでもなんでもないでしょ?」

2009年4月15日17時過ぎ。ニュルブルクリンク・ノルドシェライフェのIP(インダストリアル・プール=メーカーのテスト)のパドックに、テストドライバー鈴木利男氏の乗る09モデルがタイムアタックに望むため待機していた。

ことの発端は昨年ポルシェのエンジニアが、GT-Rを試したが日産の計測したタイムには遥かに及ばなかった、と発言したことがメディアに載り、それを知った日産がGT-Rのアタックは正当なものだと異例のリリースを行ったこと。それもあって今年のタイム計測はメディア立ち会いの元で、というのが水野氏の出した答えだったわけだ。テスト前、水野氏はメディアを集めてこう説明した。

「お客様にお届けするものと同じクルマがどのくらいのパフォーマンスを持っているのか? それをご自身の目で確認していただきたい」と。

同時にこの日走らせるGT-Rの説明がなされた。今回使用する車両は09モデル。サスペンションは当然純正品。ただし製品公差の中で、中央値からやや上のものを用いる。タイヤはダンロップ社製の純正品。ただしホイールはスペックVのものを用いる。

既に路面確認のためにコースに一度出て戻った状態で、ラジエーターには扇風機が当てられて強制冷却されている。装着タイヤは新品に交換されたが、それまで履いていたものを見るとグリップ状態が良くないと判る。なぜならタイヤは全く溶けていないからだ。

「路面に花粉などのホコリが積もっていて全然グリップしていない」とは水野氏の弁。その後思わず、「難しいかもしれない」というひと言が発せられ、果たしてタイム更新はあるのか? 誰もがそう思ったのだった。

「出すよ!」という水野氏のかけ声で、鈴木利男氏がドライブする09モデルがIPのパドックを後にする。

我々はこの後、GT-Rが戻ってくるのをひたすら待つだけである。タイムキーパーは1分毎に、皆に聞こえるように声をあげて知らせる。「利男さん3分です」と言った具合で、つまりスタートから何分が経過したかを伝えて行く。水野氏に「いけそうですか?」と聞くと、「微妙なところ。ただ、さっきより5秒は早く帰ってこれる、と思う」言う。

何をもって5秒なのかが判らなかったが、数多くのテストを率いてきた水野氏の経験からくる確信だろう。

「利男さん7分です!」

タイムキーパーの声が響く。いよいよ、だ。

それから数十秒を経て、GT-R独特のサウンドがこだましてきた。そして鈴木利男氏の駆るGT-R09モデルが、パドックに入った。果たして…。

間もなく7分27秒56という数字が伝えられた。それまでの記録は昨年の7分29秒だから、2秒記録を縮めたことになる。ドライバーの鈴木利男氏に感想を聞くと、氏はやや残念そうに「路面が滑りやすかった。もう少し路面状態がよければ」と言った。

つまり、09モデルは条件が揃えばさらに上を行く、ということである。水野氏がやってきて「ね、インチキでもなんでもないでしょ?」と笑いながら言う。GT-Rの速さは証明された。市販車と同じ仕様がそのタイムを刻んだのだ。そう思うと、GT-Rが以前よりも威厳のある存在感を持っているように思えた。

それは確かに目の前で展開された出来事だった。つまり僕も立ち会い人の一人になったわけだ…と記したいところだが、実はこの週にGT-Rは再びタイムアタックを行い、7分26秒70へとタイム更新に成功したのである。ただしコルベットZR1の記録にはコンマ数秒届かなかったが…この辺りに関しては島下くんのレポートを参照にしてほしい。

こうして僕の今年初のニュルブルクリンクはまさにGT-R一色だったわけである。

日産GT-R開発チームは、ニュルブルクリンク・ノルドシェライフェを故郷として新たな開発を続けている。そしておそらく秋には再びこの地においてテストが行われるだろう。その時には再び開発チームを尋ねてみたい。

そして次はできることなら、ノルドシェライフェでGT-Rを、自身の手で走らせてみたいと思う。なぜならばこのクルマの知られざる能力や感触は、そこでこそ光るものを持っているに違いないからである。

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