ポルシェ「ケイマン」のルーツはココにあり！「911」の陰に埋もれた“FRポルシェの完成形” 「944ターボ」を振り返る

944ターボ

抜群の速さと秀逸なドライブフィールを両立。いい汗がかけた

944ターボの走りは、まさにスポーツカーの鑑であった。公称スペックは最高速度245km/h、0～100km/h加速6.3秒。

これらの数値は当時の空冷「911カレラ（930型）」を凌ぐ実力であり、実際のテストでも容易に公称値をクリアする真の速さを備えていた。エンジン特性は2000rpmあたりからトルクが立ち上がり、3000rpm超でターボが本格的に作動、4500rpm以上でさらに加速感が強まる設定。

ドライバーは5速MTを駆使して、パワーバンドに回転を合わせながら走らせることになる。その行為自体が楽しく、エンジンレスポンスもターボとしては抜群に良好だった。

運動性能面でも944ターボは秀逸。トランスアクスル方式によって理想的な前後重量配分を実現し、アルミ製サスペンションアームやブレンボ製4ピストンブレーキ、前後異径のワイドタイヤが高次元でバランス。

通常は弱アンダーながら、ドライバーの操作次第で自在にオーバーステアへと持ち込める懐の深さが魅力だ。

ワインディングでもハイスピードクルージングでも抜群の安定感を誇り、911では緊張を強いられるような場面も944ターボでは難なくこなす。ロングツーリングでは「911＝冒険」に対し、「944ターボ＝楽しみ」と言える存在だった。

1989年モデルではさらなるパワーアップが図られ、250ps／349Nm、最高速260km/hを実現。完全なリアルスポーツへと進化を遂げていた。