日本車最後の砦、ロードスターの改良とは
掲載 更新 carview! 文:河口 まなぶ/写真:小林 俊樹
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しかしそれを貫くことは、今の日本では逆行と表現できるほど異例なことでもある。インスタントに安くクルマが求められる現在の自動車づくりの中にあっては、ロードスターのようなクルマが極めようとする価値や本質はあまりにもわかりにくい。“操作系のフィーリングを、以前のモデルよりも良くする”といった開発は、我々クルマ好きにとってウェルカムだが、メーカーにとっては「で、それでどれだけ売れるの?」という話であり、クルマに興味のない大多数のユーザーにとっては「で、どれだけメリットがあるの?」という話になる。
にも関わらず今回ロードスターは実に細かな変更や改良を行ってきた。エンジニアの梅津さんがその辺りを説明してくれた。
まず1つ目は、ブレーキ・ブースターのリアクションディスクの特性を変更し、ブレーキペダルを踏んで戻していくときの、実際のブレーキの効きの追従性を高めたという。またアクセルにも改良を施して、アクセルペダルを素早く踏み込んだ時にはスロットルを大きく開け、ゆっくりと踏んだ時にはジンワリと開けることで、ペダル操作に対してよりリニアにスロットルが動くようにレスポンスを高めている。
改めて文字にしてみると実に酔狂なこだわりである。しかし、こうした地道な改良が独自の表現につながり、走りに価値が生まれる。つまりロードスターがロードスターであるための本質的な部分なのである。こんな細かなことをしても、爆発的に売れるようになるわけではないし、もしかするとクルマ好きですら気付かれないかもしれない。それでもこだわる純粋さに、僕らがどこかで希望を感じているのも間違いない。
ミスターロードスターこと貴島孝雄さんからロードスターの主査の座を受け継いだ現主査の山本さんからも、新世代に対応するための変更を伺った。
ロードスターは今回、歩行者保護に対応するために、アクティブボンネットを採用した。これは万が一歩行者をはねてしまった時に、歩行者がボンネットに頭を打ち付ける可能性があるわけだが、こうした時にボンネットのヒンジ辺りに仕込んだ火薬を爆発させてボンネットの付け根を浮き上がらせ、エンジンとボンネットの間に空間を与えて頭への衝撃を緩和する。最近のクルマはボンネットが高いため、こうした機構を与えずとも平気だが、ロードスターのように低いボンネットを持つスポーツカーではこうした対処が必要だ。もっとも次期型では、この辺りも織り込んだ設計がなされるだろうが。
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