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令和5年と平成5年……30年前と今とでは売れるクルマと価値はどう変わっているのか?

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令和5年と平成5年……30年前と今とでは売れるクルマと価値はどう変わっているのか?

 令和時代の今、2023年と30年前になる平成5年の1993年、貨幣価値などが変わってきているとはいえ、国産車の車両本体価格は上がっている。そこで2023年の現在と1993年当時で買えたクルマでは何がどう違うのかを探った。

文/渡辺陽一郎、写真/トヨタ、日産、三菱、スバル、ホンダ、ベストカー編集部

令和5年と平成5年……30年前と今とでは売れるクルマと価値はどう変わっているのか?

■30年前の1993年は国内販売台数647万台だが、2022年は420万台

ベストカー本誌の1993年7月26日号。当たり前だが、表紙を飾るモデルたちの顔ぶれが今とはあまりにも違う……

 現在は令和5年で2023年。平成5年はちょうど30年前の1993年であった。そこで30年前と今で、クルマの価格がどのように変化したかを比べてみたい。

 まず1993年と2023年では、クルマの売れ方が大きく異なる。1993年の国内販売総数は647万台であった。1990年の778万台に比べると少ないが、コロナ禍の影響を残す2022年の420万台に比べると、30年前は1.5倍売れていた。30年前を基準にすれば、今の売れゆきは54%と少ない。

 売れ筋のカテゴリーも変わった。国内販売全体に占める軽自動車の比率は、1993年は24%であった。それが2023年は36%に達する。2022年は39%まで増えていた。

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■売れ筋車種カテゴリーも大きく変化

1992年に登場した90系マークII。直6の2.5Lエンジンがメインとなり、歴代初のツアラーグレードも設定された

 売れ筋の車種も変わった。1993年にはセダンの人気が高く、トヨタならマークIIやコロナ、日産ではローレルやプリメーラ、三菱ではディアマンテといった車種が堅調に売られていた。しかし今では、これらのセダンはすべて廃止されている。日産のセダンはスカイラインのみで、三菱は用意していない。

 このほか1993年にはステーションワゴンも豊富で、トヨタカルディナ、日産アベニール、マツダカペラカーゴワゴンなどを選べたが、今は激減した。2ドア/3ドアクーペも同様で、トヨタの6代目セリカやAE101型レビン&トレノ、日産S14シルビア、ホンダ4代目プレリュード、マツダFD型RX-7、三菱GTOなどは過去のクルマになった。その代わり今は、前述の軽自動車、コンパクトカー、コンパクトなSUVが増えた。

 つまり1993年にはクルマの売れゆきが多く、3ナンバー車を含めて、ミドルサイズ以上のセダン/ワゴン/クーペも堅調に売られていた。それが今の国内販売台数は、30年前の約半分だ。売れ筋車種も、軽自動車などに縮小されている。

■新車販売縮小の背景には日本人の所得が増えなかったこととの相関関係が

1993年当時は1991年にFMCを受けて登場した5代目シビック、スポーツシビックが販売されていた

 この背景には、クルマの価格と所得の変化がある。クルマの価格については今は30年前に比べて大幅に上昇した。

 例えば、1993年にはシビックなら5代目モデル(スポーツシビック)が販売されており、3ドアボディの人気が高かった。売れ筋グレードの3ドアVTiは、直列4気筒1.5Lエンジンを搭載して価格は154万7000円であった。

現行型シビック5ドアHB。30年前の5代目モデルと比べると大きく、立派になっている

 それが現行型シビックLXは、1.5Lターボを搭載する最も安価なLXでも324万600円だ。シビックの価格は30年前の2倍以上に高騰している。

 1993年の2代目レガシィツーリングワゴンは、水平対向4気筒2Lターボ(EJ20ターボ)のGTが286万6000円であった。今のレガシィアウトバックは、X BREAKE Xが、1.8Lターボを搭載して414万7000円だ。現行型のターボエンジンは、30年前のGTに比べて排気量は小さいが、価格は1.4倍に増えた。

 ミニバンでは、1993年には初代バネットセレナが売られていた。売れ筋グレードのFXは、直列4気筒2Lエンジンを搭載して206万円であった。それが今のセレナは価格が最も安い2LノーマルエンジンのXでも276万8700円だ。現行セレナの価格は30年前の1.3倍になる。

 このように現在と30年前の価格を同じ車種の売れ筋グレード同士で比べると、ほかの車種も含めて、おおむね1.3~1.4倍に値上げされている。シビックの2倍は価格差が大きすぎるものの、クルマの価格は高くなった。

■値上げされたのは安全装備やADASが原因

ADASの進化などもあり、現在のクルマは大幅に価格があがってしまっている

 値上げされた一番の理由は、安全装備や運転支援機能の充実だ。例えば、5代目シビックの安全装備を見ると、現時点で装着が義務化されている横滑り防止装置は設定がなく、先進的な運転支援機能はもちろん採用されていない。

 運転席エアバッグは用意されていたが、VTiはオプション設定で、サイド&カーテンエアバッグは採用されていない。4輪ABSも同様にオプションだ。

 さらにエアコンやアルミホイールなどもオプションで、今のシビックに比べると、装備は大幅に乏しい。VTiのメーカーオプション価格は、運転席のみのエアバッグが8万円、4輪ABSとトラクションコントロールのセットは16万円、エアコンのオプション価格は17万5000円だから、上記だけでも合計すると41万5000円だ。

 このほかのさまざまな装備、さらに衝突安全性能、走行安定性、乗り心地の向上なども含めると、今のクルマの価格が高まるのも納得できる。

■所得は増えないのに、クルマの価格は上昇し続ける?

現在はライズなどコンパクトなサイズのクロスオーバーSUVも多く販売されている

 加えて消費税の違いもある。1993年当時は、消費税を含まない価格が示されていた。それが今は10%の消費税分を含む金額だから、本体価格が同じでも金額は大きく変わる。

 1993年の200万円の車両は、今なら本体価格に消費税を加えた220万円で表示される。こういった点を含めると、1.3~1.4倍の値上げも納得できる。進化した機能や装備と価格のバランスで見ると、今のほうが買い得になった面もある。

 それでもクルマの価格が高まったことに代わりはなく、その一方で所得は伸び悩む。所得の推移は、世帯別か個人かで少し変わるが、いずれにしてもピークは1990年代の後半だ。バブル経済の絶頂だった1990年を過ぎても少し増え続けた。そして今の所得は、1993年と比較して完全には回復していない。

 つまり、1993年に比べると、今はクルマの価格が高まって所得は減った。これでは同じ車種に乗り続けるのは難しい。小さなクルマに乗り替えるユーザーが増えた。

 この影響で前述のとおり、軽自動車の比率が1993年の24%から40%近くまで増えた。コンパクトカーやコンパクトSUVも多く売られている。その代わりミドルサイズ以上のセダンやワゴンは、世界的な人気低迷もあって売れゆきと車種を減らした。

■1993年には300万円でも上級モデルが購入できた?

日産の軽EV、サクラ。普及している背景にはもちろん、政府からの補助金制度がある

 今後は電気自動車も徐々に増えて、床下に駆動用電池を搭載しやすいことから、背の高いSUVが今以上に目立ってくる。SUVは空間効率も優れているから、充分な室内空間を確保しながらボディを小さく抑えることでも有利だ。

 しかし、価格が高いと購入しにくい。電気自動車を軽自動車サイズで開発した日産サクラが突出して多く売られている背景にも、価格とのバランスがある。サクラXの価格は254万8700円だから、経済産業省による補助金の55万円を差し引くと約200万円に収まる。

 日本車のバリエーションは増えたが、国内需要を支えているのは車両本体価格220万円以下のクルマたちだ。この価格帯の車種をいかに充実させるか、メーカーがユーザーの期待に応えられるか否かはそこで決まり、売れゆきも大きく左右される。

 ちなみに今のミドルサイズカーは、先に挙げたセレナやシビック、さらにインプレッサ、マツダ3、ステップワゴンなどを含めて、売れ筋グレードになると価格が軒並み300万円前後に達する。

 30年前の1993年なら、この価格帯には80型スープラSZ、Z32型4代目フェアレディZ300ZX、9代目クラウン4ドアハードトップ2500ロイヤルサルーンなどが用意されていた。

 30年前の300万円の一般的な物価や貨幣価値は、今とほぼ同じだが、購入できる車種は憧れの上級モデルであった。この点だけを捉えても、クルマに対する興味の持たれ方が30年前と比べて変わったことが容易に理解できる。

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みんなのコメント

35件
  • 昔は良かった、って呟く人生は送りたくないですね。
  • 日本人の平均所得が先進国並みに上昇していれば何の事もないのに。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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