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もはやセダン不要。アルファードとヴェルファイア、知っておきたいグレードごとの走りの違い

もはやセダン不要。アルファードとヴェルファイア、知っておきたいグレードごとの走りの違い

新型アルファードと新型ヴェルファイア

グレードごとの走りの違いをチェックした

話題沸騰の新型トヨタ「アルファード/ヴェルファイア」に試乗した。理想的なライティングに照らされた屋内の発表会での姿ではなく、炎天下に置かれた新型アルファードとヴェルファイアは、従来型に対しギラつきはやや抑えられながらも依然として威風堂々としていて存在感は十分だった。グレードごとに走行や使い勝手の印象を報告したい。

>>アルファードのグレード一覧・価格詳細はこちら
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大きく向上した車体剛性

最初に接したのはアルファードの「エグゼクティブラウンジ(E-Four)」。872万円。アルファードとして最上級、最高額のモデルだ。ちなみにエグゼクティブラウンジ同士を比べると、ヴェルファイアのほうがFWD、E-Fourともに20万円高い。

何はともあれ走らせる。試乗会場から一般道に出るまでの取付道路を20~30km/hで走らせただけで、大げさではなく、従来型を大きく上回る快適性を獲得していることに気付かされる。

具体的には、段差や路面の荒れた部分による振動の乗員への伝わり方が穏やかで、かつ収束が速い。段差を越える際にドンと突き上げがくるのではなく、トンと優しく伝えてくる感じ。当たりがソフトだと振動の収束が遅く、収束を速くすると当たりがシャープになるというのが一般的だが、剛性を高めたボディと煮詰められたサスペンションによって、いいとこ取りを実現している。

まず多くのトヨタ/レクサスが採用し、最も販売台数の多いプラットフォームであるTNGAコンセプトの「GA-K」という車台を採用したことで、従来型に比べて車体剛性の高さは格段に上がった。

さらにフロア下の車体中央部から両側の後部に向かって、斜めの筋交いのようなブレースを追加し、ねじれやすい大きな箱型の車体の剛性を高めた。これらが乗り心地のよさに大きく貢献していることは間違いない。

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トヨタは快適なミニバンづくりがうまい

一般道で40~60km/hで走行している間もその印象は変わらない。いいモノ感に包まれたままだ。

交差点を曲がった際のロールのしかたが適切で、全高が1935mmもあり、ドライバーの目線も相当高いクルマなのだが、グラッと揺さぶられる感覚はほとんどない。実際には車体は物理の法則にしたがって傾いているはずだが、傾く速さや量がしっかりコントロールされているのだろう、ほとんど揺れていないように思える。ミニバン大国ニッポンのシェアナンバー1メーカーだけあって、トヨタは快適なミニバンづくりがうまい。

今回、アルファードのエグゼクティブラウンジは225/65R17というサイズのタイヤが標準装着だ。ヴェルファイアのエグゼクティブラウンジが装着する225/55R19よりも、またアルファードのZが装着する225/60R18よりも小さな17インチを採用する。廉価グレードよりも小さなホイールを採用するのは珍しい。これはアルファードのエグゼクティブラウンジがシリーズの中で最良の乗り心地を獲得するためだという。

実際に乗り心地は素晴らしい。同じプラットフォームの「クラウンクロスオーバー」よりも快適だ。同価格帯の欧州の高級車と比べても遜色のない快適性を備える。この後お伝えするヴェルファイアのエグゼクティブラウンジは見た目のよさとキビキビとしたハンドリングを優先し、19インチを採用する。

>>クラウンクロスオーバーってどんな車? 価格やスペックはこちら

シリーズ全体を通じて225cmと、車体のサイズや重量を考えると細いタイヤなのも特徴だ。サルーンやSUVと違って室内の広さを極限まで求められるミニバンの場合、室内スペースに影響するため、あまり太いタイヤを装着することはできない。全幅1850mmを維持して日本での取り回しのよさを確保するという、自らが決めた要件もあるので、外に広げるわけにもいかない。

開発陣によれば、十分なフロントタイヤの切れ角を確保し、室内空間を確保し、全幅も広げないというほとんど無理ゲーを、各担当がミリ単位でやり取りすることでクリアしたという。17インチタイヤで快適性を追求し、細い225cmのタイヤで室内空間を確保する。タイヤを細くした副産物として、燃費に有利になったという。

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高速域で光る静粛性の高さ

首都高も走らせる。一般道よりも高速域になるとわかってくるのが静粛性の高さ。新型アルファード/ヴェルファイアは本当に静かだ。スムーズに空気を切り裂く形状を突き詰めて風切り音を低減させたことに加え、遮音材を効果的な場所に配置することでロードノイズや車外の音をできるだけ遮断したという。

車体のあちこちに煙を流して空気の流れを突き詰めたほか、密閉性を高めて外部の音をできるだけ遮断した。クルマの場合、密閉性を高めすぎてしまうとドアが閉まりにくいクルマになってしまうのだが、アルファード/ヴェルファイアのエグゼクティブラウンジではその不満が出ないギリギリのところまで密閉性を高めたとか。

2.5L直4エンジン+モーターのシリーズパラレルハイブリッドのパワートレーンは、従来型に比べ格段に力強くなったわけではないが、2.3トンの車体を痛痒(つうよう)なく走らせるのに十分な動力性能が備わっている。特に電動部分の性能が向上しているため、発進のスムーズさが増した。前述した乗り心地のよさと静粛性の高さによって、パワートレーンまで進化したように感じる。要するに総合的にクルマのレベルが上がった。

短時間ながら2列目でも過ごしてみた。すでにcarview!はじめ多くのメディアで詳しく紹介されているが、ありとあらゆる快適装備が付いているため、走行していようと停止していようと、長時間過ごすにはもってこいの環境だ。もちろんめちゃくちゃ広い。振動を吸収するために2列目シートのレールとボディの間に免震ゴムが挟み込まれている。3列目も、3人掛けの中央にならない限りまずまず快適。

>>安心してください。電動スライドですよ! 新型アルヴェル「リアシートのひみつ」

乗り心地か、見た目とグッドハンドリングか

ヴェルファイアの「エグゼクティブラウンジ(FWD)」に乗り換える。870万円。パワートレーンは同じなので受ける印象も同じ。リアモーターがない分数十キロ軽いので理論上は軽快なはずだが、2トン超えの数十キロなので速さの違いを体感することはできなかった。

いっぽうで車体の挙動は明確に異なる。19インチタイヤを標準装着しているほか、ヴェルファイアだけにフロントのラジエターサポートとサイドコアメンバーを繋ぐブレースが追加されていることもあって、ステアリング操作に対するクルマの動きはシャープだ。17インチタイヤを装着したアルファードの快適性に感心したため、19インチタイヤのヴェルファイアの乗り心地をやや心配していたが、気になるレベルではなかった。

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19インチといっても55と扁平率が極端に低いわけではないので、舗装のよくない区間を走行しても車体がドタバタするといったことはない。ただし比較すれば17インチのアルファードが明確に快適。乗り心地を取るか、見た目とグッドハンドリングを取るかだ。

顔と売っている販売店が異なっていただけの歴代アルファードとヴェルファイアから、顔と特性が明快に変わった新型。迷うだろうが、楽しく迷うことができそうだ。問題は迷っている間にどんどん納車が遅くなること。トヨタには早く生産体制を整えてほしい。

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これならハイブリッドを選ぶ

次に乗ったのはヴェルファイアの「Zプレミア(FWD)」。新型では3.5LのV6エンジン搭載モデルがなくなり、2.4L直4ターボエンジンに置き換わった。最高出力279ps、最大トルク430Nmと、数値上はV6エンジン時代を上回っているが、実際に乗るとどうか。期待していたほどの力強さは感じなかったというのが正直な感想だ。決して遅くはないが、力強くもない。これならハイブリッドを選ぶ。というかハイブリッドの出来がよい。

もちろんターボエンジンなので過給圧を上げればもっとパワーを上げることは難しくないはずだが、その代わり、現代的ではない燃費性能になってしまう。新型のZプレミアのカタログ燃費は10.3km/L(4WDは10.2km/L)。さすがに従来型のように一桁になるのはまずいと考えた結果、これくらいのパワーに落ち着いたのかもしれない。

もっとずっと力強いアルファード/ヴェルファイアが欲しいという人は、追って登場することがアナウンスされているPHEVモデルを待とう。新世代のトップ・オブ・アルヴェルはPHEVということだ。

>>ヴェルファイアのユーザーレビュー・専門家の評価はこちら
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もはやセダンは不要に

最後に短時間ながら2.5L直4エンジン+CVTのアルファード「Z(4WD)」にも試乗した。

当然ながら力強さは望めないが、前述した車体剛性の高さや静粛性の高さは得られるわけで、送迎用などドライバーが楽しむという目的でないのであればアリ。ただあとからより廉価なグレードが登場する可能性はある。

走行性能と快適性能の両面において新型の完成度は非常に高い。なかなか新型が出ず、販売店もユーザーもやきもきしていたが、細部まで作り込みをしていたわけだ。納車待ちの方々には、待つだけのことはあるとお伝えしたい。セダンでないと得られないフォーマルさはまだ残っているかもしれないが、人の運転で快適に移動するという意味ではもうセダンはいらないと思う。

>>ショーファーカーへと変貌した新型アルファード。廉価グレード追加の有無を主査に聞いた

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