GDPマイナスに若者失業率20%超え! 中国バブル崩壊は日本車メーカーに凶と出るか吉と出るか?
掲載 carview! 文:編集部 28
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中国の大手不動産デベロッパー「中国恒大(読み:こうだい)」がニューヨークで破産申請したというニュースが世間を騒がせている。正確には連邦破産法第15条の申請なので、外貨建て債務の再編に向けた手法の一つと見る向きもあるが、同業の「碧桂園(カントリー・ガーデン、読み:へきけいえん)」も急速な経営悪化が続いており、長年中国経済を牽引してきた不動産業界が岐路に立っていることは間違いない。
では、こうした中国経済の減速は自動車業界にどんな影響を及ぼす可能性がるのだろう? 中国とのつながりも深い日本メーカーへの波及も含めて考えてみたい。
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まず、現状の中国経済がどのような状況にあるのかというと、1990年代初頭に起きた日本のバブル崩壊と共通点がかなり多い。例えば、土地は値上がりし続けるという土地神話を前提として過大な融資が横行、その一方、少子高齢化の進展により潜在成長率が低下し、硬直的な社会保障制度に起因する将来不安で消費も減退。
成長率低下に拍車がかかり、物価上昇率が低下し、土地神話が崩壊した結果、不動産企業の経営が悪化している…といった流れだ。
あとは、土地が値下がりに転じ大量の融資が不良債権化し、金融機関の経営危機により健全な企業への融資を絞り込み、企業倒産が増加。失業者が増えてさらに消費が縮小、慢性的なデフレ経済へ突入となれば、まさに日本のバブル崩壊そのままだ。
加えて雇用のミスマッチもあり中国では若年失業率が20%を超え、将来への希望をなくした「寝そべり族」も出現するなど、日本のバブル崩壊よりも酷い状況が顕在化するかもしれないのだ。
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では、深刻なバブル崩壊が起きた場合、自動車メーカーはどうなるのか。そのためには、まず日本の自動車メーカーに、バブル崩壊時何が起きたのか振り返る必要がある。
まず、1980年代後半の日本車はまさに我が世の春を謳歌していた。典型的なのが1988年に登場した日産の「セドリック/グロリア・シーマ」で、当時としては画期的な3ナンバー専用ボディ、大排気量エンジン、ドアミラーワイパーなどの過剰ともいえる豪華装備が特徴だった。

<写真:日産 シーマ>
こうした500万円を超えるグレードもあるラグジュアリーセダンが、月平均3000台を超える勢いで売れ「シーマ現象」なる言葉も生まれた。ところが、90年代初頭にフルモデルチェンジした2代目シーマはバブル崩壊の影響をもろに受け、一気に販売台数を減らし、その後も本格的な回復の目を見ないまま昨年生産を終了してしまった。
また、バブル期の象徴的出来事としては、マツダが販売店を「マツダ」、「ユーノス」、「アンフィニ」、「オートザム」、「オートラマ」と5チャンネル化したことも記憶に残る。とにかく新車を出せば売れるという時代だっただけに、ブランド内の競争を強化しようと取られた施策だが、結果的にバブル崩壊で共倒れを増やすことになった。
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<写真:ユーノス コスモ>
このほかにも当時は三菱自動車が1.6Lという世界最小排気量のV6エンジンを発売するなど、とにかく日本車は威勢が良かったが、その後こうした潮流が続くことはなかった。
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となると、今後中国の自動車市場で起きうることは、まず過剰な高級車ブームの沈静化だろう。これは何も販売のかなりの部分を中国市場に頼っている一部超高級スーパーカーブランドだけの問題ではない。例えば、フォルクスワーゲングループをはじめとする中国市場を意識したプレミアムブランドは、中国市場の落ち込みをもろに受ける可能性が高いだろう。
もちろん、中国国内メーカーも例えばハイファイやニオのようなプレミアム市場に狙いを絞っているブランドは、厳しい状況に置かれるかもしれない。また、メルセデスなどドイツ勢を始め多くのメーカーが、セダン車種のロングホイールベース版を中国用に専用開発しているが、これらも中国以外での販売量確保が難しく、ラインナップの縮小を迫られる可能性もある。
次に、やや趣を異にするが、マツダの多チャンネル化失敗から想起されるのは、まさしく雨後の筍の如く誕生している中国新興EVメーカーの厳しい先行きだ。日本ではようやくBYDが販売されるようになったばかりだが、欧州では既にニオやシャオペンなどのメーカーも販売を開始しており、彼らはこれまで日の出の勢いだったと言っていい。

<写真:中国のプレミアムブランドでは成功例とされる「ニオ」。高級セダン「ET7」は航続距離1000kmを謳う>
もちろん、こうした比較的有名なブランドに加え、中国国内では正確にカウントし切れない程の企業がEVを販売しており、その中には国際的に通用する商品を開発しているブランドもあれば、そうではないものもある。つまり、これまではとりあえずEVを作れば売れるという時代だったので販売拠点さえ設置すればメーカーとして成立したが、今後は消費者の購買姿勢が慎重になり商品力が厳しく吟味される時代が到来するだろう。そうなると、多くの新興メーカーが淘汰の危機を迎える可能性がある。
もっとも、こうした事態は一概に悪いこととは言い切れない。例えば、万一の事故に対し万全の対策を備えた自動車はそう簡単に作れるものではないため、新興メーカーの中には「安かろう悪かろう」で安全性をおろそかにしている企業も隠れているとされる。
そうしたメーカーが淘汰され、良品が残るという状況は、長い目で見ればユーザーにとって悪いことはでないし、価格はやや高くても安全性を重視する先進国の競合企業にとってはフェアな競争条件が整うことになるだろう。そうなれば、トヨタ、ホンダなどの日本勢にとっても追い風が吹くことになる。
では、こうした時代の変化は日本車にとってどういった影響をもたらすのだろうか。まず考えられるのは、高級車一本足打法を取っているメーカーがない分、高級車ブームの沈静化は日本車メーカーにとって相対的に影響が少ないという可能性だ。もちろん、中国市場全体の自動車販売台数もこれまでのようには伸びないだろうから、従来の業績見通しは引き下げざるを得なくはなるだろう。
ただ、そうした状況になっても中国の一般国民に対するモータリゼーションの波はジワジワと広がっていくと考えられるため、手頃な価格で信頼性が高いという日本車の魅力を地道に訴求していけば、案外活路は開けるだろう。
ただし、アルファード/ヴェルファイアのレクサス版「LM」など、日本円で2000万円級のプレミアムカーは販売に陰りが出るおそれがある。不況の影響を受けない富裕層は一定数いるが、市場が縮小方向に向くと、やはり販売台数は減少するからだ。
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次に、新興EVメーカーの淘汰は、中国市場だけでなく、グローバルで日本車メーカーにとってチャンスだろう。というのも、玉石混交の中国国内市場が是正されれば、ここ数年繰り広げられている熾烈なEVの価格引下げ合戦も沈静化し、メーカーの利幅が回復すると考えられるからだ。
また、圧倒的な価格競争力で急速に欧州EV市場で存在感を高めていた中国メーカーの勢いが弱まれば、EVで出遅れた日本車にも挽回の機会が巡ってくる。
そもそも、欧州各国の急激なEVシフトは、ハイブリッド(HV)で先行した日本車を駆逐し、覇権を取り戻そうという露骨な日本つぶし戦略と見ることもできるだろう。それが中国に機先を制された結果、欧州の思惑は外れ、不本意な価格競争に巻き込まれていたわけだが、欧州メーカーとしても、中国失速のシナリオは存外にウェルカムかもしれない。
<終わり>
写真:マツダ、日産、トヨタ、NIO
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