ホンダ雪上試乗会、一番楽しいモデルは？

「アクティ・トラック」は昨年12月に10年ぶりのフルモデルチェンジを受けた。パワートレーンはミッドシップ・リアドライブ方式を採用し、空荷時でもリアのトラクションを確保。パワーはわずか45psながら、軽量コンパクトなボディと最小回転半径3.6mの取り回しのよさで、狭い雪道でも自由自在に振りまわせる。トランスミッションは5MTもしくは3ATで、最低地上高は185mm。価格は76万6500円～112万8750円。

プリミティブなクルマの良さ

さまざまなカテゴリーのクルマに一気乗りした中で、ハンドリングをもっとも楽しめたのは、意外にも軽トラックの「アクティ」であった。ホイールベースが短く、ミッドシップレイアウトを取る。これってスポーツカーの必須条件でもあり、旋回性能に優れるパッケージングであることを意味する。でも、さすがに雪道ではホイールベースの短さが効き、いとも容易にテールスライドを起こす。大袈裟でなく、時にフルカウンターを当てなければならないほどその動きはトリッキーだった。でも、軽いからコントロール性にも優れ、不安感はない。立派な「働くクルマ」であり、楽しむクルマではないが、あらためてパッケージングと軽量がクルマのハンドリングにどれだけ重要かということを実感できた。最近のクルマは大きく重くなり、電子装備で武装されている中、プリミティブなクルマの良さを再認識させられるクルマでもあった。

そして今回、新型ハイブリッドモデルにもこっそり試乗した。雪上限定だがその愉しさを確信した。にもかかわらず、ホンダは「スポーツ」と表現することに躊躇している。環境意識の高まりと共に、スポーツカー＝悪というイメージが強まっていってしまうのが寂しい。でも、ハイブリッドはエコなだけじゃなくファンもあるということを垣間見ることができた。

以前のホンダは、ニッチだけど魅力的なスポーツモデルを創り出すメーカーというイメージがあった。が、いまや、王道を行くミニバンのホンダという印象が強い。企業規模も大きくなった今、時代に即し、ユーザーニーズに合ったクルマづくりは営利企業としては当然である。と理性で理解しながらも、どこかで昔ながらの「愉しいクルマを作ってくれる」という期待も捨てきれないでいた。

今回、さまざまなモデルに一気乗りすることで、ホンダイズムはまだ健在であることを確信した。しかも皮肉なことに、軽トラックやATV、汎用機など、きわめて実用的で生活に密着したものからそれを感じた。基本に忠実に、人にやさしくといった気持ちが商品に具現化されているのだろう。ミニバンが人にやさしくないわけじゃないけれど。今後も、エコだけどファンなクルマの登場に期待したい。