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マセラティの急先鋒、ギブリに酔いしれる

ポジティブな驚きがあるドライブフィール

新型ギブリは、エンジンやシャシーといった多くの部分にクワトロポルテと同じパーツを使っているが、ボディはひとまわり小さい。しかしそれでも全長は4970mm、全幅は1945mmという堂々たるサイズ。重量も後輪駆動の「ギブリ S」で1950kg、4WDの「ギブリ S Q4」になると2トンを超えるのだが、走り始めると、サイズやウェイトをまったく感じさせない軽快でスポーティなドライブフィールに驚かされることになる。

エンジンは410psという最高出力と、550Nmの最大トルクを発生する3LV6ターボ。グラントゥーリズモのV8と比べるとサウンドは抑え気味だし、音質も低音域を重視したタイプ。なにやら特別なエンジンを操っている、という感覚は希薄だ。僕としては、せっかくマセラティに乗るのなら痺れるようなサウンドに酔いしれたいなと思ったが、どうやらこれもメーカー側の狙いのようだ。その証拠に、車外ではそうとうハイピッチないい音が聞こえる。おそらく、遮音性を高めるためにあえてコックピットに届く音量を抑えているのだろう。これも、ドイツのライバルと対抗するための「チューニング」である。

ただし、アクセルを深く踏み込んで積極的に回転を上げていくと、少々控えめではあるものの、クォォーンというピッチの揃ったサウンドを発し、神業調律師がいまなお健在であることを知らしめてくれる。もちろん、動力性能面で不満を感じるケースなどあるはずもなく、いついかなる状況からでも右足の動きひとつでおよそ2トンのボディを強烈に加速させる。トルク特性はフラットだが、粘りのあるトルク感……というよりは、硬質でパンチの効いた印象だ。

フットワークにも同じことが言える。路面にヘバりつくような接地感はないものの、ステアリング操作に対するノーズの動きはとにかくシャープ。長いノーズがスパッと気持ちよく向きを変える。ワインディングロードでギブリを操っていると、大きさや重さのことなどすっかり忘れ、まるでスポーツカーに乗っているような感覚になる。このあたりは、ドイツ勢にはないギブリならではの魅力だ。

快適性や安心感ならメルセデスが上だし、コーナリング性能ならBMW、高速直進性ならアウディに軍配があがるだろう。けれど、視覚やドライビングを通して伝わってくる官能性においてギブリには非凡な実力が備わっている。ドイツ車には散々乗ったから次は目先を変えて……という消極的な理由から選ぶのも大いにアリだが、4ドアサルーンにさらなる官能性を求めたい人にとっても、ギブリは大いに注目すべき存在だ。

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