ポルシェミュージアムへ 圧巻の歴史が一望に
掲載 更新 carview! 文:伏木 悦郎/写真:編集部
掲載 更新 carview! 文:伏木 悦郎/写真:編集部
ここから先はもう勝手知ったる世界。再びVWとのコラボによるミッドシップの俗に言うワーゲン・ポルシェの914(1969年)もタルガトップ(1971年)の911もほぼライブで経験した。カレラRS2.7(1973年)、930ターボ(1976年)と続き、356以来のカブリオレ(1983年)の復活によって現在ある911の体系は整った。
そのプロセスの中で登場した924(1974年)、928(1977年)という直4、V8のFRモデルは、発表時の力の入りようとは対照的に21世紀の時代に語られことがほとんどなくなっている。ポルシェにはFRのフォーミュラカー360チシタリアもあれば、917Kや956に代表される数多くのミッドシップレーシングカーが存在する。しかし、5600平米に及ぶ広い展示フロアに漂うのは、タイプ64ベルリン・ローマ・ワーゲンから現代の911(タイプ997)シリーズに受け継がれている空気感だった。
924カレラGTをはじめとするほとんどの4気筒モデルを試し、V8 の928もライブで経験している身としては複雑な心境にならざるを得ないが、それも歴史ということなのだろう。気になったのは、連綿と系譜が続くRRスポーツとは違って、924、928が妙に古くさく感じられたことである。
ポルシェ博物館は、外縁を周回する順路の外側に時代を追って市販モデルを配置し、通路を挟んだ内側にレーシングマシンやコンセプトカーを同じく時系列的に並べるレイアウトになっている。ポルシェは世界有数のプレミアムスポーツカーブランドであると同時に、創業前から一貫してモーターレーシングに戦いの場を求めるコンストラクターとしての顔を持ち続けている。その一対の感じが見る者を飽きさせない。競争を通して闘い続けた結果としての展示には、どれも関わった人々の息遣いが感じられる。
スポーツカーもレーシングマシンも晴れと褻(け)のハレの存在ということでは同じだが、より日常に近いスポーツカーは展示物として置かれていると案外身近に感じられるものだ。プレミアムブランドとしての興味からホールに足を踏み入れると、通常はレーシングコースという観客席の向こう側にいる遠い存在(マシン)が何の仕切りもなく並んでいる。見学者は、ポルシェという特別なブランドが長い年月を掛けて作り上げてきた商品的価値を自由に辿ることができる。時間軸だけでなく、日頃接することの出来ない競技者としての実績を対比しながら…である。
難しいことを考えなくても、そこにある色やデザインの豊富なバリエーションは見ているだけで元気になる。訪れた日が日曜日ということもあって、けっこうな見物客で賑わっていたが、老若男女幅広い層が夫婦、親子連れ、友達同士…様々な形態で訪れている。幼児や若い女の子のグループが無心にクルマを眺めている光景は、この国のあり方を無言の内に語っているように思えた。
展示エリアは、創業の1948年以前と以降に大きく分けられ、(1)ポルシェの理念、(2)製品の歴史、(3)テーマ展示エリアという明確な3つのコンセプトの下に構成されている。理念とは、たとえば軽量化や技術革新、スピードに対する空力的取り組みや力強さとパワーの関係を端的に説明するコーナーが設けられている。話は難しそうだが語り口はやさしい。
なによりも明るくてデザイン感覚に溢れたスペースの居心地の良さが印象的だ。これだけの広さに80台の展示車両。ヘタをするとすかすかになりそうなボリュームだが、2フロアを立体的に結んだ空間設計が退屈さを遠ざけている。小さな男の子を連れたお父さんが嬉しそうに付き添い、ティーンエージャーの女の子がごく自然に旧いVWビートルの説明に見入っている。エントランスにあるカフェに憩う人々は誰も皆柔らかい笑顔だった。
僕はといえば、時間が過ぎるのを忘れて写真撮影に没頭した。仕事というよりも、ただそこにある展示を残すことなく収めておきたいという衝動に駆られてだった。こういう博物館が日本にも欲しい。無い物ねだりを承知の上で、そう思った。それにはまずポルシェのような魅力的な人物が現れて、心に響くクルマを作り始める必要がある。21世紀のモビリティに華を添えるブランドを産み出さなくては。シュツットガルトから戻ってから、そのことばかりを考えている。
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