食わず嫌いはもったいない。BYD「ATTO3」は“ごくごくフツー”のBEVだった
掲載 carview! 文:小林 秀雄/写真:編集部 157
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中国メーカーによる日本の乗用車市場への本格進出という意味で注目を浴びているBYD。バッテリーメーカーとしての技術力を活かした独自開発の乗用バッテリーEV(BEV)を2023年中に合計3モデル展開する予定となっており、第一弾モデルであるコンパクトSUV「ATTO3(アットスリー)」が23年1月に発売された。
アットスリーのボディサイズは全長が4455mm、全幅が1875mm、全高が1615mm。他メーカーのBEVと比べると、トヨタの「bZ4X」とスバルの「ソルテラ」が全長4690mm、全幅1860mm、全高1650mm。フォルクスワーゲンの「ID.4」が全長4585mm、全幅1850mm、全高1640mmとなっているので、それらよりほんの少しコンパクトなサイズ感だ。
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リン酸鉄リチウムを使用した通称「ブレードバッテリー」と呼ばれる薄型バッテリーをフロア下に敷き詰め、電池容量は58.56kWh、航続距離470kmを実現。6kWの普通充電やCHAdeMO方式の急速充電、クルマの電力を自宅や家電に供給できるV2H/V2Lなどにも対応している。
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23年中頃発売予定の「ドルフィン」や、23年末頃発売予定の「シール」などは、エクステリアデザインにも個性があらわれているが、アットスリーの外観は良くも悪くも穏当。街中でキラリと光る存在感があるわけでもなく、逆に悪目立ちすることもない、いたってフツーのSUVという印象だ。
その一方で、新しさと個性を実感させてくれるのがインテリア。インパネとドアトリムには筋肉繊維を思わせるような有機的な縞模様が施され、BEVにありがちな無機的な印象を払拭。それでいてエアコンの操作パネルをシフトレバー周辺に配置するなど、インパネから物理スイッチを一掃し、すっきりとした操作レイアウトを実現している。
ダイムラーと技術提携を結んでいるからなのか、スイッチ類などの細かなパーツはメルセデス・ベンツ各車と似たところもあり、何となく既視感を覚えた。
インターフェースの核となる12.8インチのタッチスクリーンは回転式となっており、横向きと縦向きを自由に変更できる。ナビゲーションの地図は進行方向を広く表示できるので縦向きが便利だ。
液晶メーターの表示もシンプルで、バッテリー残量と航続可能距離を常時確認できる。日本市場に合わせてウインカーレバーが右に備わるなど、使い勝手は良好だ。ドアハンドルに設けられたスピーカーにはアンビエントライトが仕込まれ、再生している音楽の曲調に合わせて色や光り方を変化させるところもおもしろいと感じた。
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走り始めてまず驚くのは、発進時と低速走行時にだけ意図的に車内スピーカーから再生される走行音。車内に風が入ってきているのかと最初はびっくりしたが、慣れてくると気にならなくなった。モーターの最高出力は150kW、最大トルクは310Nmで、とてもパワフル。
ストップ&ゴーの多い街中ではBEVらしい扱いやすさを実感できる上、高速道路での追い越し加速もスムーズだ。ボディの安定感やステアリングを切った時の反応も良好で頼もしい。ただ、スポーツモードを選んだ時の加速力が高い分、ブレーキに関しては初期制動の立ち上がりもう少し速いと安心感に繋がる印象も残った。
アダプティブクルーズコントロールは左側のステアリングスイッチで操作。イラストの表示もわかりやすく、初めてでもすぐに操作することができた。先行車への追従マナー、LKA(レーンキープアシスト)の車線維持にも違和感はなく、実用的。ACCとLKAの対応速度は0~120km/hとされているが、走行速度は150km/hまで設定することが可能だった。
後席のスペースは前後方向も頭上も十分なクリアランスが確保され、乗り心地も悪くない。標準装備されるパノラマルーフのおかげで、天気のいい日には開放感を味わえるだろう。ラゲッジルームには高さを変えられるデッキボードが備わり、6:4の後席シート格納機構も装備。SUVとして求められる積載性もしっかり確保されている。
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440万円という車両本体価格が噂通りリーズナブルであることは、試乗を通して実感することができた。ただ、23年3月納車までは2022年度のCEV補助金が適用されていたが、新年度のCEV補助金で最大85万円の補助金を得るには型式指定が必要となってくる。
アットスリーは型式指定を受けない、いわゆる並行輸入車の形で取り扱われるため、補助金の適用額が減ってしまい65万円となる。だが、それを踏まえてもなお、アットスリーの価格が大きなインパクトであることに変わりはない。
実用的(現実的)なBEV購入を検討している人は、食わず嫌いをせずに一度試乗してみることをおすすめしたい。
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