すでに試乗インプレも アウディQ3をギリ出し
掲載 更新 carview! 文:木村 好宏
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SUV…いわゆるライト・クロスカントリーとかシティ・オフローダーと言われる種類のクルマは1990年の中頃から台頭し、いまや世界中で流行、一つのセグメントとして確立するほど息の長い好販売台数を維持している。
世界市場を見ると今から11年前の2000年には749万台でシェアは9.55%だったものが、2010年は977万台で、シェアは13.35%へと拡大している。そして市場予想によれば2020年には1640万台、およそ14.9%のシェアを獲得すると言われている。
ちなみに世界規模でのトップ3はホンダ CR-V、トヨタ RAV4そしてニッサン キャシュカイ(デュアリス)となっており、この後をVW ティグアンが追いかけている。
ちなみにユーザーの選択基準は世界的に共通で「高い着座位置と広い荷室、ミニバンよりもスポーティ、4WDの場合は冬期の走破性の高さ」などが挙がっているようだ。
スイスのチューリッヒで開催された国際試乗会に現れた「Q3」は非常にコンパクトで、サイズは全長4385mm(-244mm)×全幅1831mm(-49mm)×全高1608 mm(-45mm)と確実にQ5よりも小さく、同じPQ35プラットフォームに構築されているVW ティグアンよりも42mm短い。
一方、2603mmのホイルベースは同じで、幅が22mm広がっているので前後のキャビン内に窮屈さはまったくない。ただしトランクルームはティグアンが通常で470リッター、リアシートを倒した場合は1510リッターなのに対して、Q3は460リッター&1365リッターと、リアシートを倒した場合のスペースがやや小さい。
これはQ3のリアエンドがクーペ状に強く傾斜しているためである。つまりデザイン重視、いわゆるライフ・スタイルSUVなのである。
ここ数年、アウディのデザイン、特にフロントは全部同じに見えると言われるが、Q3は目尻のつり上がった鋭い輪郭のヘッドライトユニットで、兄弟と言うよりは従兄弟くらいにQ5とは異なっている。ただし、菱形のコンビネーションライトを両脇にレイアウトしている車幅一杯の広さを持ったリア・ゲートのデザインはほとんどQ5のミニチュア版だ。
新しいデザインの4本スポークを持ったステアリングホイール、ダッシュボード上のナビおよびマルチディスプレイ、画面センターコンソールなどインテリアは相変わらずアウディらしい高い質感を持っており、小さくてもプレミアムな高級感を漂わせている。
試乗したモデルは新色サモア・オレンジのボディで、搭載されるエンジンは最高出力211ps、最大トルク300Nmを発生す2リッターTFSIである。組み合わされるトランスミッションはスタンダードで6速MT、試乗車はオプションの7速Sトロニックを装備している。
ボンネットとリア・ゲートがアルミ、その他はスチールで構成されるボディの重量は1565kgで、このモデルは0-100km/hの加速が6.9秒、最高速度は230km/hに達する。確かにダッシュは鋭い、しかもスイスの山道に入って高いギアを選択してもスピードは落ちず、加速を続ける。
実はテスト車はスポーツ・サスペンションが装備されていたので乗り心地はやや固く、市街地の低速走行ではちょっと荒さが残った。しかし速度が上がるにつれて路面をソフトになでるような快適な乗り心地に変わってくる。
EPSのステアフィールもやや全体にアシスト量が大きすぎる感があるものの、剛性感やゲインなどは間違いなく合格点に達していると報告しておこう。
Q3はプレミアムを標榜するだけあって、安全や環境対策などにたくさんの電子制御システムが用意されている。4段階のドライブロジックには「エフィシエント」が加わった。これはシフトタイミングやエンジンのスロットルレスポンスを緩慢にするほか、電子機器や補機類の作動を最小限に絞ることで低燃費を実現している。ただしEPSの電力まで絞って走行中の中立付近でアシスト量を減らしているのは少々やりすぎである。
スイスの高速道路は最高速度120km/hに制限されているので、211psのアウディQ3ではモノ足りない。ここで新しい低燃費システムを試してみることにする。
平坦なや下りでギアは7速、およそ80-120km/hの間でスロットルを引きかげんにするとタコメーターの針がストンっと落ちる。クラッチが切れてエンジンはアイドリング状態になるのだ。こうして燃費を稼ごうという仕組みで、確かにCd値0.32というこのセグメントでは優秀な空力特性を持つQ3はけっこう長くコースティング状態を保った。
スイスのようにクルマの数が比較的少なく、かつ100~120km/hで流れている条件では良いかも知れないが、速度制限が解除されているドイツ・アウトバーンや、逆に日本のようにテール・トゥ・ノーズの混雑した高速道路では果たして効果があるかはわからない。日本へ導入されるモデルは全てSトロニック搭載でこのシステムが装備されているはずなので試してみたいものだ。
アウディによる公称燃費は新欧州基準走行値で100kmあたり7.7リッター、リッターあたり換算するとおよそ12.9km となる。
ドイツでの発売時期は2011年11月からで、6月から受注は始まっている。テストした2リッターTFSIモデルのベース価格は19%の付加価値税込で3万6800ユーロ(約420万円)と公示されている。
このQ3はスペインのバルセロナ郊外マルトレルにあるセアトの工場で生産され、年産10万台を目標にしている。
ところで兄弟モデルのティグアンとの価格比較だが、同じエンジンが搭載されていないので直接比較はできない。しかし、ティグアンは180psバージョンで2万8575ユーロ(約330万円)とおよそ90万円も安い。さらにティグアンのFFモデル(1.4リッター122psのTDI)はなんと2万4175ユーロ(約280万円)で買える。
それでもアウディの喧伝するライフ・スタイルに共鳴する人、あるいは、そうなりたい人たちには魅力的だ。特にQ5を大きすぎると考えている日本人にはきっと魅力的だろう。日本での発売時期だが早くても2012年の後半になる。
※文中の金額は1ユーロ=115円で計算、四捨五入したおおまかな数値。
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