フェラーリ初のPHEV・SF90ストラダーレをテスト。銀座通りでV8の爆音を響かせる時代はもう終わりだ
掲載 更新 carview! 文:木村 好宏/写真:Ferrari S.p.A 119
掲載 更新 carview! 文:木村 好宏/写真:Ferrari S.p.A 119
フェラーリの聖地マラネッロで対面したSF90は全長4710×全幅 1972×全高1186mmの真っ赤なボディで、全体のデザインはこれまでのV8モデル「488GTB」や「F8トリブート」の流れを汲むものだが、ヘッドライトなどのディテールは一層シャープな仕上がりを見せている。フェラーリファンにとってリアコンビネーションライトが丸型から小さな変形四角形になってしまったのはちょっと残念かもしれない。
フェラーリエンブレムの入ったライターのようなキーをセンターコンソールに置いて、バケットシートにもぐり込むと、正面のマルチファンクションスポーツステアリングホイールが迫ってくる。
赤いスタートボタンはタッチ式に変わっており、最初のワンタッチで「ON」、正面の16インチの曲面デジタルバーチャルディスプレイが起動、様々な情報が表示される。再びスタートボタンに触れると「READY」すなわちスタンバイモードで、ここで昔のシフトゲートを思わせるセレクトスイッチで1速ギアをセットし、アクセルペダルを踏み込むとまずはフロントにある各135馬力を発生する2基の電気モーターによって、フェラーリらしからぬ無音の電気走行が始まるのだ。
このゼロエミッション走行はフェラーリ初のFFでEV航続距離は最大で25km、その間の最高速度は135km/hである。ドライブモードは「e」の付いたマネッティーによってE(EV走行)、ハイブリッド、パフォーマンス、そしてクオリファイといかにもF1=フェラーリらしいパターンが選択できる。マラネッロ郊外の一般道路では「ハイブリッド」で十分にダイナミックなドライビングを楽しむことができた。ワインディングロードでは、フロントの2基の電気モーターの行うトルクベクトリングによるクイックなターンインに胸のすくような感覚を覚えた。
一方、フィオラノテストコースでは軽量バージョンの「アセット フィオラノ」で走ることに。まずは「パフォーマンス」を選択、ペダルを踏み込むと背後からV8ツインターボエンジンが炸裂、同時に3基の電気モーターが世界最強のカルテット演奏を始める。このスポーツバージョンはスタンダードよりも明らかにシャープなハンドリングとパワー展開を示した。特にミシュラン パイロット スポーツ カップ2は非常に高いグリップ性能で、サーキット走行でタイムアタックを促してくる。ちなみにSF90をオーダーしたオーナーの50%はこの軽量バージョンを選択しているという。
最後に価格だがスタンダードバージョンが5340万円、アセット フィオラノはさらに570万円の追加料金が必要となる。ただし現在は完売状態で、今注文してもデリバリーは間違いなく2年先となる。
ところで SF90というモデル名の由来だが、エンツォ・フェラーリがまだ自動車メーカーになる以前、彼が1929年に設立し、今日にも続いているレーシングチーム(SF:スクーデリア・フェラーリ)の90周年を意味している。SF90の登場によって、ハリウッドのロデオドライブやパリのシャンゼリゼ、あるいは銀座通りで、V8サウンドを炸裂させる時代は過去のものとなるだろう。
※取材記者が独自に入手した非公式の情報に基づいている場合があります。
※写真:Kimura Office、フェラーリ
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