BRZ tS。走りはチューニングの模範解答?
掲載 更新 carview! 文:五味 康隆 /写真:菊池 貴之
掲載 更新 carview! 文:五味 康隆 /写真:菊池 貴之
tSは、スポーツ性を確保しながら大人な乗り味と表現したい上質さを備えた乗り味を持つ。この味が随所で得られるのが特徴で、例えばトランスミッションからも得られる。
専用に仕上げられたtSのマニュアルトランスミッションは、ノーマルよりも全般的に操作感が滑らか。それでいて1速から2速などのシフト変速動作に対してカチッとギアが入った感覚が伝わってくる。滑らかなのに、カチッとしている。これまた矛盾するような表現だが、仕方ない。tSは、通常であれば両立しない要素を併せ持っており、だからこそ見事なのだから。
素直に感じたままを書けば、シフト操作においては、ダイレクト感があるのにガチャつかない。乗り味においては、硬めではあるが角が無いので快適と言った具合。ちなみにこれらtSらしい乗り味は、限定のGTパッケージを装着すると、さらに研ぎ澄まされる。なぜなら、まずレカロ製のリクライニング付きバケットシートが付くから。
よく走りを求めたチューニングでは、足回りやボディ補強に注目が集まるが、改めてシートやハンドルを重視した方が良い。この2つは乗員の体に直接触れて、乗り味の印象を大きく左右する。少しマニアックな話をすると、タイヤを強く路面に押さえつけてグリップを稼ごうとすれば、足回りは述べてきたしなやかさを基調に仕上げても相応に硬くなり、乗り心地にはコツコツ感がどうしても出る。tSではそれを専用のハンドルとシートで、乗員に優しく伝えている印象がある。
さらに乗員への優しさを保ちつつ、タイヤを押しつけて効果的にグリップを稼ぐために、速度が高まるほどに押さえる力が高まる空力パーツを随所に採用。GTパッケージに至っては、大型リアスポイラーまで採用される。感覚的には70-80km/h程度から、車体が重くなったかのようなドッシリ感としっとり感が強まり、ハンドルも若干ズシッと重くなる。サーキットだとさらに顕著で、100km/hでわずかに不安定さが生じたコーナーを、通常なら破綻をきたす110km/hでも同じレベルの不安定さのままで走れてしまうといった、空気の力を明確に感じられるケースもある。
誰にでもお薦めしたいスポーツモデルであり、加えて腕に覚えのある方は、空気の力を明確に感じる超非日常的な世界まで堪能できるはず。今回試乗して、久々に愛車の86を買い替えたくなった。
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