新型エルグランド、プロトタイプに先行試乗!
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:小林 俊樹
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:小林 俊樹
日産は先代エルグランドの優位性のひとつにFRレイアウトによる走りのよさを挙げていた。たしかに、初期はそれなりのアドバンテージもあったが、ライバルが2代目に進化した頃にはアドバンテージはすっかりなくなり、むしろ乗り心地と静粛性では後塵を拝していた。言い換えれば、FRを使った優位性の訴求は実質的には形骸化していたと言うことだ。
そんなわけで、今回エルグランドがFF化したことに対して、僕は何らネガティブな印象は抱いていない。むしろ、低床化によるフォルムの改善や重心高の低下、乗降性の向上、雪道での走りやすさなど、トータルの実力はむしろ上がったとすら思っている。
エンジンは3.5リッターV6と2.5リッター直4で、それぞれにFFと4WDがあり、トランスミッションは全車CVTとなる。今回試乗できた3.5リッターV6を選べば、当然ながら余裕の動力性能が手に入るが、先代より車重が大幅に軽くなっていることもあり2.5リッター直4でもとくに不満はないだろう。プラスαの動力性能に投資するかどうかは、まだ発表されていない価格や燃費を参考にして検討したいところ。いま言えるのは、少なくても3.5リッターV6に関しては、アルファード/ヴェルファイアのエンジンに対して後れをとっている印象は全くなかったということだ。
このクラスのミニバンにとって静粛性はとても重要な要素だが、この点に関してはアルファード/ヴェルファイアと同等と感じた。この分野でもライバルを上回ればそれこそ鬼に金棒だったが、敵も然る者で、とくに100km/hプラスαまでの静粛性ではなかなかの実力を示す。
今回大幅に改善されたのは足回りだ。ワインディングロードを速いペースで走ったときの安定感は先代やライバルとは比べものにならないほど。とはいえこの種のクルマでワインディングロードを飛ばす人はあまりいないはずで、むしろ日常的にメリットを享受できるのは高速道路での振る舞いだろう。まずは直進安定性がとても高い。加えてステアリングセンター部分がしっかり締まっているため安心感が高く、そこから微修正を加えた際のクルマの動きもとても自然で扱いやすい。それ以上に実力の高さを実感するのが、東名の御殿場-大井松田間のようなカーブが連続するセクションでの振る舞いだ。先代はロールスピードが速く、ステアリングを切り込む際と戻す際に、かなりデリケートな操作をしてやらないと車体がグラリと揺れた。それが新型では見事に封じ込められている。高速道路を使って長距離を走った際の疲労度は明らかに少なくなった。
モデルチェンジが遅れたことで、ビッグミニバン市場をトヨタに完全に奪われたエルグランド。この劣勢を挽回するにはそれなりの時間と努力が必要だろうが、挽回の前提となるハードウェアには8年分の進化がギュッと封じ込められていた。実力の高さを粘り強くアピールしていけば、エルグランドが再びこのジャンルのリーダーに返り咲くのは決して不可能なことではない。
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