5分でわかるVWの排ガス規制違反問題~清水和夫が真相に迫る~
掲載 更新 carview! 文:清水 和夫/写真:フォルクスワーゲン グループ ジャパン
掲載 更新 carview! 文:清水 和夫/写真:フォルクスワーゲン グループ ジャパン
厳しい排ガス規制を制するためには、NOx発生をいかに低減できるかがカギになる。その要の技術が排ガスを浄化する触媒だが、現在VWとアウディは「NOx吸蔵触媒」(NOxトラップとも呼ばれる)と「尿素SCR」(アドブルーとも呼ばれる)という、二種類の触媒を使っている。
今回、違反の対象となるのは全米で市販されたVWとアウディのディーゼル車・約48万台で、2009年から2015年まで市販されたゴルフ、ジェッタ、ビートルと、最新のパサートの4車種、さらに2009年から2015年式のアウディA3である。
詳しく調べてみると2009年モデルのジェッタなどはNOx吸蔵触媒を使っているが、USパサートは当初から尿素SCRを使っている。また、新型ゴルフやアウディA3は尿素SCRを使っている。つまり、触媒方式に関わらず不正プログラムが使われていたことになる。一方、2008年前後に同じVWグループの一員であるアウディが開発した3リッター・V型6気筒のディーゼルは、今回は問題視されていない。
排ガスの試験法は室内に設置されたローラーの上を走って、テールパイプから排出されるガスを測定分析し、その値が規制値に合致するかどうかを見る。今回問題視されているディフィートデバイスは室内試験の時は「いい子」を装い、テストに合格して、実際のユーザーの手に渡ったときに「悪い子」に戻るのだ。
ここからは推測だが、ディフィートデバイスを使って実際の路上走行ではNOxなど有害な排ガスに目をつぶることで、燃費や走りを向上できる。そして、試験の時だけEGR(排ガス還元装置)や尿素SCRの量を増やす。さらには燃料を濃くすることで燃焼温度が下がるので、NOxの排出量を下げることが可能だ。発生するススは増えるが、テストの前に空にしておいたDPF(ススのフィルター)に貯めれば外に出ない。
なぜVWが法令に違反したのか? VWはアメリカ市場でトヨタやホンダに対してライバル心を燃やしている。クリーン・ディーゼルの燃費性能でハイブリッドを打ち負かし、是が非でもディーゼルの先駆者になりたかったはずだ。しかし、厳しい排ガスをクリアする正規のプログラムでは燃費で不利になる事が、違反の原因を作ったかもしれない。もちろんVWのトップが法令違反を認めるとは思えないが、強烈なトップダウンの結果主義が現場を混乱させたというのが私の推論だ。
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