アバルト124スパイダー試乗速報。ロードスターと走りはどう違うのか?
掲載 更新 carview! 文:清水 和夫/写真:テクノメディア
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「トヨタ 86」や「マツダ ロードスター」の人気で“FR”を誤解する人が少なくないが、ドリフトすることがFRの楽しみだと勘違いしないでほしい。ドリフトはジムカーナや限られた場所でしか味わえない、趣味のドライビングだ。FRは前輪にエンジンのトルクがかからないから、ステアリングがスムーズで振動でも有利。つまり、走りがFFよりも洗練されることがポイントなのだ。
また、FRは重量配分前50:後50がベストという都市伝説も蔓延している。今回テストしたアバルト124スパイダーの重量は、車検証の記載値で1130kg、前後加重は前54%:後46%だ。ロードスターは90Kg軽い1040kgだが、同じ前54%:後46%だ。重心点から重いモノの距離が運動性能に影響するため、静的な重量配分ではなく、正しくは慣性モーメントが大切なのだ。総重量も軽ければ良いというわけではなく、サスペンションやホイールなどに重量をかけることも大切だ。静的な前後重量配分と重量の数値ではなく「重さをどう配分しているのか」が自動車の重要な技術なのである。
前置きが長くなったが、両者ともターンインはスムーズでハンドリングに不満はない。アバルト124スパイダーは250Nmのトルクを使ってコーナーリング中もパワースライドが可能だ。でも、美点はそこではなく、ステアリングフィールに芯があることだ。
サスペンションはロードスターよりもダンピングが高く、バネ上の姿勢変化が少ない。硬すぎず柔らかすぎず、アルデンテのパスタのような歯応えで、乗り心地とダイナミクスのバランスが良い。ロードカーにおけるアバルト・マジックは健在だ。アバルト124スパイダーはブレンボ製のブレーキを使うが、意外にも踏力感や剛性感はロードスターのほうが高い。
嬉しいのは6速トルコンATが選べること。これはアバルトの初体験だと思うが、ターボとトルコンATは相性が良いので、限定免許専用車ではなく、かえって6速MTより速いかもしれない。アバルトのサソリは毒ではなく、ドライバーに適度なアドレナリンを与えてくれる良薬であったと締めくくっておこう。
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