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今注目の技術「ITS」が自動車の未来を変える

日本ならではのクルマ社会を作れ!

ここまでで、「ITSがなぜ必要か」「ITSには何ができるのか」といった概容は理解できた。けれども、それぞれの取り組みが有機的に結びつかないような歯がゆさを覚える。この疑問に対する清水和夫さんの答は明快だった。

「ITSのそれぞれの取り組みを、別々の官庁が管轄しているんですね。交差点の内側で機能するDSSSは警察庁、クルマと道路が通信するITSスポットサービスは国土交通省道路局(旧建設省)、クルマ同士が通信するASVは国土交通省自動車局(旧運輸省)といった具合です。それぞれがバラバラにITSを進めるのではなく、ひとつの大きな絵を描いてそこに向かうような仕組みを作る必要があると感じています」

さまざまなITSの取り組みを横串でブスッと刺す役割を求められているのが特定非営利活動法人ITS Japanだ。自動車メーカーやサプライヤーを軸に構成したこの組織が、政府や役所と連携してITSを推進していかなければならない。

「ただし、お上にお任せじゃ絶対にうまくいかない。どんなクルマ社会に暮らしたいのか、ひとりひとりがイメージして意見を伝える努力をする必要がある」というのが清水和夫さんの意見である。

事実、清水さんは「ITS世界会議 東京2013」の開催期間中に約30名の学生や主婦を集め、『「つながるクルマの未来」を清水さんと語ろう 白熱討論会』を企画した。清水さんのほかに東京大学の大口敬教授、国土交通省の西川昌宏氏、トヨタ自動車の森敬一氏らがフランクに意見を交換したのだ。

この討論会では、ITSを軸に、どんなクルマ社会が望ましいのかについて積極的に議論が戦わされ、たとえばクルマの負の側面も数多く挙げられた。「どんな高性能車でも目的地に着いたら停めなくてはいけない。スムーズに駐車できないことも、クルマ離れの一因」「クルマより、電車のほうが到着時間が確実に読める」などなど。

ただし、こういったクルマの弱点も、ITSによってかなりの部分が解決できるだろう。もし、クルマの負の側面がなくなり、環境に負荷をかけずにスムーズに移動ができるようになれば、われわれの生活は大きく変わる。たとえば、早朝にサーフィンを楽しんでから出勤してもいいのだ。

ほかにも、「クルマは全自動で動いたほうが効率的」という意見や、「高速のサービスエリアのトイレの空き状況を車内で知りたい」という若い女性からの切実な要望も飛び出した。こうした意見をひとつひとつ考えながら、自分たちがどんなクルマ社会を本当に望むのか、じっくり考えるべき時期だろう。

清水さんは、今回のITSの入り口となる企画を、次の言葉で締めてくれた。

「ITSが、クルマの負の側面を大きくリカバーします。しかもさきほど言ったように、ETCやカーナビ、VICSのある日本はITS先進国。2020年東京五輪に向けて交通整備のモチベーションも上がっているし、世界で最も早く高齢化社会がやってくるという現実もある。世界にさきがけて、日本が新しいクルマ社会を作ることができるし、またやらなければいけないと考えています」

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