新型ムラーノ、アドバンテージはどこに？

ライバルのお株を奪う乗り味

ライバルのトヨタ・ハリアーが海外ではレクサスとして販売されているのをご存じの方も多いと思うが、現時点では、新型ムラーノの乗り味のほうがハリアーのそれよりよほどレクサス…というかLSっぽい。もっというと“SUV版クラウン・ロイヤルサルーン”のようでもある。

かといってムラーノの走りが、柔らかいだけのダルダルの腰くだけ…というわけではない。V6と4気筒では前輪荷重に80kgの差があるが、実際の回頭性や限界性能においてV6と4気筒で予想外に差が小さいのは、シャシーの基本キャパシティが大きいからだろう。4本のタイヤは執拗に路面に粘りついて、ロードホールド性能は素晴らしく高い。またエクストレイルに続いて採用された賢い4×4iが、新型ムラーノのフロントタイヤから積極的に駆動力を吸い出してくれるのも奏功しているに違いない。

4気筒にCVTが組み合わせられたことで、4気筒の動力性能に決定的なパンチ不足を感じなくなったことも嬉しい。絶対的な速さや静粛性ではV6に分があるのはもちろんだが、単独で乗っているかぎりは2.5リッターに不足感、安っぽさなどはみじんも感じない。さらに4気筒のCVTにはV6の6速マニュアルモードのかわりにSレンジが用意される。最近のCVTは燃費志向でエンジンブレーキが弱いから、放り込んでおくだけでエンジンブレーキが強まるSレンジはマニュアルモードよりも煩わしくなく扱いやすい。

とにかくスタイルコンシャス、ドロ臭くない存在感で売るムラーノは、日産車としては輸入車からの乗り換えも多いという。ハリアーやCX-7に加えて、BMW・X3やランドローバー・フリーランダー、VW・ティグアンなど欧州勢にもライバルは多いが、新型ムラーノのアドバンテージはそのスタイリングに加えて、じつは乗り心地の良さや静粛性にある。見た目は最も派手だが、乗り味は最も落ち着いている。