“素”のパナメーラ V6エンジンを骨の髄まで!
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:ポルシェジャパン
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:ポルシェジャパン
ポルシェが高級セダンという新しいセグメントに参入するにあたって、もっとも重視したのは「ポルシェのエッセンスを強く与える」ことだった。実際、パナメーラに興味をもち、購入を検討している人にとっては、セダンのセオリーを忠実にトレースしていることよりも、“ポルシェに見えること”のほうがずっと強い説得材料になるはずだ。
ポルシェに見える…これはバッジだけの話ではない。たとえポルシェのバッジを付けていたとしても、それがごく普通の3ボックスセダンだったら、長い歴史と伝統をもつSクラスや7シリーズに勝つことは難しい。しかし、見た目と内容でポルシェらしさを色濃く打ち出すことができれば話は別。そもそもの立ち位置が違えば、つまり真っ向勝負を避ければ勝ち目は十分にある、とポルシェは踏んだ。
事実、パナメーラのルックスはライバルとは明らかに一線を画す。顔つき、そして何よりファストバックスタイルが、ポルシェ一族であることを高らかにアピールしている。フォーマル感はライバルに及ばないものの、そもそもパナメーラは運転手付きで後席に乗る人をターゲットにしたクルマではない。自らステアリングを握り運転を楽しみたい…そんなマインドを持っている人たちに、911を連想させるパナメーラのフォルムは強くアピールするだろう。
高級セダンの最新トレンドという側面から見ても、パナメーラのアプローチは理に適っている。かつての高級セダンは、フォーマル度を優先した保守的なモデルが多かった。しかし、BMWは先代7シリーズにきわめて個性的なデザインを与え、Sクラスから多くの顧客を奪うことに成功した。現行Sクラスが前後フェンダーを大胆に脹らませたスポーティでパーソナルな方向に舵を切ったのも、またCLSのような妖艶なセダンをリリースしてきたのも、そんなトレンドに追随するためだ。
そう、いまどきの高級セダンに求められているのは、フォーマル性ではなく、エレガントさであり、スポーティさであり、インパクトの強いキャラクターなのだ。実際、4ドアセダンと4ドアクーペの境界はかなり曖昧になってきている。この流れがさらに加速すれば、今後ファストバックの高級セダンが市民権を得る可能性は大いにある。というか、すでに市民権を得つつあると言ってもいいだろう。パナメーラの累計販売台数は発売から1年で2万2500台に達し、強力なライバルがひしめく高級車マーケットで13%ものシェアを獲得することに成功したのである。
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