タイプRA試乗。売り切れ御免の人気限定車
掲載 更新 carview! 文:五味 康隆 /写真:菊池 貴之
掲載 更新 carview! 文:五味 康隆 /写真:菊池 貴之
「やさしい!」。乗り味における印象深い特徴がコレだ。
誤解を生み易い表現かもしれないが、ボクが知る限り、STIがつくり出すコンプリートカーには一貫して、この乗り味が根幹の魅力として備わっている。もちろん、その時代ごとに持っている技術が違うので、その"やさしさ"のレベルは異なるが、このNBRパッケージ付きのタイプRAは、歴代モデルで最も色濃くそれが出ているとも言える。
そうは言っても、こんな感覚的表現が最初に頭に浮かんだことについては説明の必要があるだろう。
勘違いしてもらいたくないのは"柔らかい・やさしい"という乗り味は、スポーツ性と相反する軟弱な要素ではないということだ。確かに、本格的なレーシングモデルは車体の動きにおける全ての無駄が削ぎ落とされて、通常のドライブで使えばリラックスして運転できず、心身共に疲れてしまうこともある。
しかし、STIのコンプリートモデルは、そのようなレーシングモデル的性格を持ちつつも、扱いやすさも兼ね備えた、特有の乗り味を持っている。これが"やさしい"という表現を直感的に抱かせる理由だ。コーヒーに例えると、華やかなアロマや渋みはあるのに、まろやかさで飲みやすいというイメージかもしれない。
具体的に話していこう。乗り心地に注目をするとSTIの特徴がよく解る。高い旋回スピードでのロールを抑えるために、足回りはスポーツカーらしく硬めに仕上げられている。しかし、単に硬いわけではなく、サスペンションの動き出しや切り返しはとても穏やかだ。タイヤをガッチリと路面に押さえ付けて安定したグリップを発揮させる一方で、乗り心地における不快感も少ない。
要は、コテコテ硬派のスポーツモデルにありがちな、路面のギャップを乗り越えたとき「もうスポーツモデルは二度と乗らん!」と思わせるガツンッ!という突き上げが少ないのだ。突き上げの角が丸くなった印象で、例えるなら衝撃吸収材の上に落とされる卵が乗員といったところ。安定した高いグリップ力を求めた足回りは、結果的に衝撃吸収性が高まり"やさしい"乗り味を提供しているのだ。
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