タイプRA試乗。売り切れ御免の人気限定車
掲載 更新 carview! 文:五味 康隆 /写真:菊池 貴之
掲載 更新 carview! 文:五味 康隆 /写真:菊池 貴之
ボクはSTI開発部隊はマジシャン集団だと思っている。前章で述べた、硬められた足をやさしく感じさせるセッティングもそうだし、同様のマジックが幾つも盛り込まれている。新幹線に乗っていて、その動きから300km/hで走っていることを実感する人はまずいない。高層ビルのエレベーターも同様だ。要は、実際に起きている現象と、人間が得る感覚は異なるわけだが、クルマは実はこの宝庫なのだ。
例えばアルカンターラ表皮のシート。見た目の高級感も上がるが、滑りにくく体がシートにガッチリ固定される。するとハンドル操作などが安定して無駄な入力が減り、ごく自然に細やかな運転になる。クルマの動きは安定し、クルマが素直に走り出す。ドライバーは運転が上手くなったように感じるし、足回りやボディの良さも理解できるのだ。
エンジンはターボの軸にボールベアリングを使ったインプレッサWRX STI スペックCと同様のものだが、感覚的にも出足が鋭い。タイヤとの相性を追求した足回りの的確な動きもあって、タイヤが路面を掴んでグイッとクルマを前に押し出すトラクション性能が上がり、エンジンがよりスムーズにパワフルに稼働しているフィーリングがある。
そして極めつけのマジックが、通常の13:1→11:1に速められたステアリングギア比だ。簡単に言えば、ハンドルの切れ角が鋭くなった結果、4WDでありながらハンドリングに優れるFR車のような素直な曲がり出しを、タイプRAは実現したと理解してもらっていい。そしてここから先は、このステアリングギア比の変更にまつわる、ちょっとマニアックな推理を掘り下げてみよう。
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