これならきっと奥様も満足!? レヴォーグ レイバックはスバルの新境地「都会派SUV」に!
掲載 carview! 文:伊達軍曹/写真:SUBARU 184
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このたび発表されたスバルのニューモデル「レヴォーグ レイバック(以下、レイバック)」を事前に行われた試乗会で乗ることができた。試乗コースは特別にクローズドとされた一般道である。勝手な予想では「アウトドアギア風味濃厚なクロスオーバーSUV」になると思い込んでいたレイバックだったが、実際に登場したそれは「都会派志向のクロスオーバーモデル」であった。
そして結論としてレイバックは「主には都市部で快適かつ愉快に暮らし、ときにはカントリーサイドへも赴くための、上質なDセグメント車」を求めているすべての人に、掛け値なしに推奨できる一台であった。
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レイバックが目指したポジショニングはズバリ「都会派SUV」だ。
土の香りがして、実際に土を得意とするSUVであれば、スバルにはすでに順当なラインナップが用意されている。フラッグシップといえる「レガシィ アウトバック」。ミドルサイズの人気者である「フォレスター」。そして手頃なCセグメントなれど、その実力はセグメントを超えている「クロストレック」。
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これらはどれも「土の世界」のトップランナーのみならず、都市部で使ったところで何ら問題は生じないSUVだ。実際、筆者は過去にクロストレックの前身であるXVに乗っていたが、雪道や悪路を走ったのはほんの数回で、主戦場は都内および近郊の舗装路だった。
とはいえ「イメージの問題」として、スバルのSUVはいささか土の香りが強すぎる。
都市の住人に受けるSUVとは、もっとこう洗練されたイメージを持つ、土の香りがあまりしない、具体的な車名でいえばトヨタ「ハリアー」やアウディ「A4オールロードクワトロ」のようなニュアンスのモデルなのだ――という仮説のもと、「都会派SUV」という現在隆盛の市場に向けてスバルが送り出した刺客あるいは挑戦者が、今回のレイバックだ。
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エクステリアはレヴォーグとよく似てはいるが、大きく異なってもいる。一見する限りでは「レヴォーグと同サイズか?」とも思うが、実際の寸法は全長4770mm×全幅1820mm×全高1570mm。ホイールベースこそレヴォーグと同値だが、車体はレヴォーグより15mm長く25mm幅広で、70mm高いという仕上がりだ。最低地上高も、レヴォーグの145mmに対して200mmまで上げられている。
やや大きくなったボディをただそのまま持ち上げると「腰高でダサい」といった印象になってしまうため、レヴォーグとよく似ているようにも見えるレイバックのエクステリアは、ヘッドライトとバンバーのデザインだけでなく、実は各所が「腰高で貧弱には見えないように」という方向で細かく調整されている。
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運転席に乗り込むと、着座位置はレヴォーグよりも明確に高い。そして最低地上高が上がったことによる「車内への乗り込みづらさ」を抑制すべく、レヴォーグのそれとよく似た形状のフロントシートは、サイドサポート部の土手の高さがレヴォーグよりも低くなっている。
しかし実際にドライバーが座ると座面はほどよく沈み、そのうえで、今回新たに採用されたシート内の「インサートワイヤ」がお尻を的確に保持するからだろうか、サイドの土手が低くなったことによるホールド性の低下はまったく感じられない。いや、むしろホールド性は増しているようにすら感じる(言い忘れましたが筆者はレヴォーグオーナーです。そのうえで、言ってます)。
11.6インチセンターインフォメーションディスプレイとフル液晶メーターを中心とする運転席まわりの意匠と機能はD型レヴォーグと同様だが、大きく異なるのはインテリアカラーだ。
レヴォーグでは黒一色またはボルドーとなっているインテリアだが、レイバックは黒い座面のほかにアッシュ(ややイエロー寄りの灰色)を大胆に配置し、さらにはカッパー(赤銅色)のステッチも入るという配色になっている。
この配色については好き嫌い、あるいは賛否両論あろうかと思うが、少なくとも「車オタクっぽい感じからの脱却」には成功している。
現行型レヴォーグを購入する意向があるご夫婦の場合、夫側がレヴォーグの実用車としての素晴らしさを力説しても、妻側が「でも、このスポーツカーっぽい感じがなんかイヤ……」というニュアンスで難色を示す場合も多いとのこと。妻の気持ちもわからないではない。だがレイバックのインテリアであれば、つまり従来からある「スポーツカーっぽい硬派な感じこそがカッコいい」的な文脈からは逸脱した配色であれば、前述の妻も好感を抱くのではないかと推測する。
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ではさっそく乗ってみよう。
搭載エンジンは、1.8L版レヴォーグと同じ最高出力177ps/最大トルク300Nmの水平対向4気筒直噴ガソリンターボ。トランスミッションはリニアトロニック(CVT)で、駆動方式は4WDのみとなる。
レヴォーグのSTI Sportで採用されている「ドライブモードセレクト」はレイバックには付いておらず、エンジンのモード制御は「I(インテリジェントモード)」と「S(スポーツモード)」の2モードのみ。ちなみにサスペンションもSTI Sportに搭載されたZF製電子制御ダンパーではなく、GT-H用をベースに専用チューニングを行ったダンパー&コイルである。
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まずはSI-DRIVEをデフォルトの「I」にしたまま、走り出してみる。力感は、筆者のA型レヴォーグSTI Sport EXを「Comfort」あるいは「Normal」モードにして走る際とおおむね同じか。最初は着座位置とアイポイントの高さにやや違和感を覚えたが、それには30秒もすれば完全に慣れてしまった。
……しかし「この静けさ」は何なんだ? それなりの速度で走っていても、ロードノイズがまったく――というと嘘になるが、しかし“ほとんど”聞こえてこない。225/55R18の大径オールシーズンタイヤという、いかにも騒音対策的にはアレなイメージがあるタイヤを履いているにもかかわらず、車内は放課後の教室のように静かだ。
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そして、いわゆる乗り心地はきわめて良好である。扁平率55%という、レヴォーグと比べればエアボリュームの多いタイヤがまずはソフトな乗り味を十分に担保し、そのうえで、レイバック専用に調律されたダンパー&コイルが「しなやかだが強靭な足腰」を実現させている。いや、そもそもすべては「フルインナーフレーム構造を採用したスバルグローバルプラットフォーム」という基本があってのことなのだろうが、レイバックのいわゆる乗り心地の良さは、ちょっと異様なほどである。
通常であれば、山坂道で前方にけっこうな段差を視認すると少々嫌な気持ちになるものだ。げんなりするというか。しかしレイバックの足は「段差を越える歓び」すら感じてしまうものであるため、山坂道を試乗中の筆者は、前方に段差を視認するたびに「Yes!(よっしゃ!)」と小さくつぶやいていたことをご報告申し上げたい。
このように「きわめて静かで、きわめて乗り心地が良い」といえるスバル レヴォーグ レイバックだが、だからといって「ダルで退屈なハンドリングの、腰砕けなSUV」というわけでは決してない。むしろ事実はその真逆だ。
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家族を乗せて山坂道を走っているイメージで、つまり30~50km/hほどでゆったりとS字カーブを走り抜けてみても、自分ひとりで乗っているつもりでそれなりのペースで同様のS字を抜けてみても、ステアリング操作に対する不快な応答遅れはいっさいない。ロール量も(体感的には)最小限で、その最小限のロールも即座に、スムーズに、収束する。……これは魔法のじゅうたんなのか?
プレスに配られた資料によれば、レイバックの操安性(遅れの少なさとクイックな応答)はレヴォーグにほんの少し劣るものの、クロストレックやアウトバックと比べれば格段に優秀で、それでいて、レヴォーグがやや苦手としている「振動の少なさ、滑らかさ」においては、クロストレックやアウトバック並みであるのだという。
つまり「クイックな応答性やハンドリング性能などのスポーツ性」と「滑らかで収まりの良い乗り心地」という、本来なら背反性能となるはずの部分が、レイバックでは両立している――というのがスバルの言い分だ。
通常、自動車に限らず「メーカーの言い分」というのはポジショントークでしかなかったりする場合も多い。だがレイバックの乗り味に関しては「メーカーの言い分は、そっくりそのまま事実である」と、試乗を通じて、そして元XVオーナーであり現レヴォーグオーナーである人間として、断言せざるを得ない。
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このレポートも現段階で3700字を超え、いささか長くなってきた。以降は端的に話を進めていこう。
●SI-DRIVEの「I」モードに入れっぱなしでも特に問題(不満)はなく、必要に応じて「S」モードを使えば、過去の300ps級スバルエンジンに今なお強くこだわっている人や、深夜の首都高でルーレット族をしている人でない限り、普通に満足できるのではないかと思われる。
●試乗前は「2.4Lターボの用意がないのはなぜだ?」と思っていたが、試乗後は「2.4Lターボはこの車には不要」と意見を変えた。レイバックの上質で静謐な世界観に、あの獰猛な2.4Lターボエンジンはいささかミスマッチであると理解したからだ。
●リニアトロニック(CVT)に関して特に変更を行ったとの発表はないが、おそらくはいろいろ細かく改善したのだろう。筆者が鈍いだけかもしれないが、「言われなければCVTだと気づかない」というレベルに達している。
●標準装備されるハーマンカードン・サウンドシステムは、車自体の静粛性の高さと相まって、かなり素晴らしい。音源によって感動の幅はけっこう上下するが、藤井 風さんの音源を聴いた際には「藤井 風が今、俺の目の前で歌っている!」と感じた。
●アイサイトへの単眼広角カメラの追加や、フロントビュー自動表示(AUTOモード)の採用などは、なんだかんだで普通にありがたい。
●個人的には、ホイールのデザインや車両全体のディテールは、もっと「アウトドアギアっぽい感じ、あるいはミリタリーっぽい感じ」に仕立てたほうが、今どきは逆に都市で映えるのではないかと思う。とはいえここは個人的な感覚のみに基づく話であり、カスタマイズ可能な箇所でもある。
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以上のとおりスバル レヴォーグ レイバックとは、きわめて上質な乗り味とスポーティで気持ちの良いハンドリング性能、そして最低地上高の高さに由来する自在性とレヴォーグ譲りの積載性、さらには最新のアイサイトXとハーマンカードン・サウンドシステムを標準装備しているSUVであるにもかかわらず、正式な価格発表はされていないが「税込ほぼ400万円」の値付けがなされるとのこと。……これはもうバーゲンプライスなのではないかと、個人的には思う。
スバルは「同カテゴリーにおける最強コスパなSUVであることを目指した」とのことだが、まさに目指したとおりの地点に着地している。
「どうせなら気持ちよく、心豊かに走りたい」と願っているすべての都市在住者に、このニューモデルを推薦したい。
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