BMWの新種、5シリーズグランツーリスモに試乗

刺激的な直6、凝縮感のあるV8

ツイン・ターボチャージャーと高精度ダイレクト・インジェクションを組み合わせる4.4リッターV8（N63型）を積む550iでも、高速道路での燃費はリッター11km台に迫る。それでいて、N63型はエンジン性能を抑えているわけではなく最大トルクは何と61.2kg-mに達する。この数値は、6リッタークラスのV12に匹敵。ところが、性能を持て余す感じはしない。低回転域でのアクセル操作に対するエンジンの応答性をあえて穏やかにしているので、市街地を走らせるときに余計な気遣いをせずに済む。もちろん、アクセルを踏み込めばレブリミットの6600rpmに迫る高回転域まで一気に吹き上がる。全回転域でほぼフラットなトルクを得ているだけに、パワーの上昇も直線的だ。いかにもBMWのエンジンらしく、回転数でパワーをキッチリと稼ぎ出す実感がある。

吹け上がり感でいえば、535iが積むN55型の方がむしろ刺激の度合いが強い。パワートレイン系とシャシー系の機能を統合制御する標準装備のダイナミック・ドライビング・コントロールをスポーツに切り替えればアクセル操作に対してトルクがスッと立ち上がり、車重を意識させることなく小気味よく加速体制にはいれる。そして、8速ATのギア比が2速まではかなり低めになっていることもあり、Dレンジのままでもアクセルを踏み込むと瞬時にレブリミットの7000rpmを振り切ってしまう。シフトアップの瞬間、タコメーターの白い指針はレッドゾーンを切り裂いて7200rpmに達していたほどだ。

高回転域まで引っ張ると、535iが積むN55型エンジンは5000rpmあたりまでN54型と同様にクォーンという感じの快音を響かせる。でも、高回転域になるとギャイーンという感じの硬質な濁音を伴うのだ。その音を新たな刺激として理解することもできるけれど、リポーターとしてはもう少しスッキリと回っている実感がほしい。550iが積むN63型は、V8らしく高回転域まで引っ張る過程でエンジンの刻むビートがギュッと詰まっている感じがする。しかも、ボリュームは控えめだけれど抜けのいい排気音を響かせる。