新エンジン搭載！ケイマン＆ボクスター試乗

味わうか、駆るか、楽しむか

フットワークについても言及しておこう。ケイマン、ボクスターともに足回りはパワー増大に伴うセッティング変更がメインであり、大きな手は加えられていないという。しかし、乗ってみると乗り心地とハンドリングの両立ポイントがさらに高まっていることを確認できた。

曲げで2倍、ねじりで2.5倍という、911に匹敵するケイマンのボディ剛性は、素晴らしくダイレクトな身のこなしとシュアなハンドリング、驚くほど快適な乗り心地を実現していた。路面をワシ掴みにして離さない圧倒的接地感やとことん素直なハンドリング、信頼感のカタマリのようなブレーキなど、走りにまつわる部分はどこをとっても超一級品。

クルマに意志を伝えると、その結果が一切のフィルターを介さずダイレクトに返ってくる。それをもとに、ドライバーは自信をもってさらに深いドライビング領域へと踏み込んでいける。この、ドライバーとマシンの描く見事なループこそがポルシェの神髄だ。もっと猛々しいスポーツカーはある。もっと洗練されたスポーツカーもある。しかし、猛々しさと洗練度をここまで高いレベルで両立しつつ、人とドライバーをこれほど完全に一体化できるのはポルシェだけ。エキサイティングなのに信じられないほど快適で扱いやすい…これこそポルシェ以外では決して味わえない魔法のバランスである。

もちろん、そのバランスはモデルごとに微妙に異なる。ボクスターのボディ剛性はケイマンには及ばないが、オープンカーとしては十分満足のいくもの。ステアリングのダイレクト感や、S字の切り返しでの遅れのなさ、荒れた路面での接地性はケイマンが上回るが、ボクスター単体で眺めれば、スポーツカーとして十二分に通用する走行性能の持ち主だ。そして何より、ボクスターにはオープンエアモータリングという最高のエンターテインメント性が備わっている。

伝統の重みを今に伝える永遠のフラッグシップ911、ピュアスポーツのケイマン、爽快なオープンエアモータリングを楽しめるボクスター。この3モデルは価格的には縦の関係だが、キャラクター的には完全に横並びの関係をもっている。そんななか、どのポルシェを選ぶべきか。ポルシェを味わうなら911、ポルシェを駆るならケイマン、ポルシェを楽しむならボクスター、というのが僕からのアドバイスだ。