最近の日本車のATやCVTでは、昔よく見かけたL(Low)ポジションや変速比の高いギアを選択、解除するOD(オーバードライブ)ポジションもほとんど見かけなくなった。
代わりにBやS、あるいはMポジションを採用する車種が増えてきた。
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そもそもBやS、Mポジションって何のためにあるのか? 使ったことがないからわからない、という人も多いのではないだろうか?
そこで改めて、ATやCVTのシフトレバーにある、BやS、Mポジションについて解説するとともに、各車種のセレクターレバーの形状、ポジションはどうなっているのか、モータージャーナリストの岩尾信哉氏が紹介する。
文/岩尾信哉
写真/ベストカー編集部 ベストカーweb編集部 トヨタ 日産 ホンダ
【画像ギャラリー】BやSポジションはあるか? 主要国産車のAT/CVTセレクターレバーを写真でチェック!
なぜBポジションが増えたのか?
プリウスのシフトレバーはジョイスティック型でBポジションがある。バックではなくブレーキの意味。プリウスの操作マニュアルによると、Bポジションは「急な下り坂など、強いエンジンブレーキが必要な時に使用する」とある
昔ながらのLowポジションを採用するジムニーの4速AT
ライズのCVTはDポジションでSポジション(坂道走行)とシフトノブをプラス/マイナスでアップ/ダウンさせるM(マニュアルモード)も選ぶことができる
まずはAT/CVTのシフトレバー(セレクターレバー)がどのように仕立てられているのか、確認しておこう。
シフトポジション(変速モード)を選択するには、基本的にレバーなどを移動させて操作するわけだが、ゲート(溝)の形状で一般的なのは、直線状のストレート型だ。
ほかには、ゲートがアルファベットのJ/L/U字のように設計されたパターンや、ジグザグ状に仕立てたゲート(スタッガード)型がある。
最近ではトヨタのプリウスが代表例のように、シフトレバーの位置が変化せず、前後左右にゲーム機器のジョイスティックを操作するような電子式セレクターも見られる。
ホンダ車のミドルクラス以上のモデルでは、シフトポジションを個々に設定されたボタンの操作で選択する方式を採用している。
ATの変速ポジションは、P(パーキング)/R(リバース)/N(ニュートラル)/D(ドライブ)が設定するのが基本パターンとなり、低速走行を担うL(Low)ポジションとして加えられていることが多かった。
「多かった」というのは、現在ではCVTやハイブリッド(トヨタのハイブリッドシステムは電子式CVTと呼ばれる)のように、ブレーキ(Brake)を意味するBポジションが設定される場合が多くなってきたからだ。
特にCVTは基本的に変速ギアをもたないゆえに、変速比の設定を自在に変えられるので、CVT搭載モデルのほとんどが変速比を抑えて擬似的なエンジンブレーキを生み出す意味でBポジションを設定している。
トヨタのCVT搭載車の多くがこのパターンを採用しているように、日本車ではCVTやハイブリッドの採用とともにBポジションの採用例が増え、変速ギアを1/2速に限定するLポジションやD2ポジションを設定するモデルは減少している。
日産車のe-POWERやEVなどは、トランスミッションを介さずモーターで駆動するので、モーターを利用した回生ブレーキによるエンジンブレーキ機能を与えるためにBポジションを設定している。
日産キックスe-POWERにはBポジションがある。セレクターレバーが中央にある時に左下のPスイッチを押すとPポジションになる
BポジションはDポジションのそばに設定される場合が多く、M(マニュアル)もしくはS(スポーツ)ポジションを加えていることも多い。
M/Sポジションでは、ステアリングコラムにパドル状のスイッチを設けて、ステアリングホイールから手を離さずに変速操作が行えるシフト機能を備えるモデルも多い。
スポーツモードといえるSポジションは、スポーツグレードや軽自動車を中心に生き残っている。普通車では別途にスイッチ操作で選択可能なSモードやECOモードなどを設定している例が増えている。
いっぽう、オーバードライブボタンの採用がほとんど見られなくなった理由としては、小中型車では燃費向上などのためにCVTの採用車種が増え、高級車ではATの多段化が進んだこともあって、変速比が直結以上の高いギアをあらかじめ設定していることが挙げられる。
メーカー、車種によってさまざまなポジション、セレクターレバー形状
ノーマルともいえる直線式レバー型となるフィット(ハイブリッドにはBポジションが付く)
概要はこれくらいにして、具体例を見ていくことにしよう。トヨタの標準仕様とハイブリッド仕様で共通の仕様となる直線型のシフトゲートでは、BポジションはDポジションの下に設定される。
ミドルクラス以上やスポーツ系モデルなどでは、Dポジションの脇にマニュアル操作が可能なMポジションを設定している例が多い。
ホンダの新型フィットのシフト機構は、旧型のハイブリッドではボタンとの併用だったが、標準型との兼ね合いもあってか、直線型のレバー式に統一されている。
このあたりは使い勝手やコストの面で決まってくるといえるだろうが、アコードなどのミドルクラス以上の中型モデルやEVのホンダeでは、各ポジションを選択するボタン式となっている。
それでは採用するシフト形状を分別したうえで、車種とシフトポジションの設定をピックアップして見ていこう。
Bポジションが付く直線式レバー型のヤリスハイブリッド
■直線式レバー型
・トヨタライズ、ダイハツロッキー:PRNDSM
・トヨタヤリス:PRNDB
・日産ルークス:PRNDL
・ホンダフィット:PRNDS(ハイブリッド:PRNDB)
・ホンダN-BOX:PRNDL(カスタム:PRNDS)
・ホンダN-WGN:PRNDS
・マツダCX-30:PRNDM
・ダイハツタント:PRNDSB
・ダイハツタフト:PRNDSB
・スズキスペーシア:PRNDL(カスタム、ギア:PRNDM)
・スズキハスラー:PRNDL
・スバルレヴォーグ:PRNDM
ゲート(スタッガード)型のアルファード
■ゲート(スタッガード)型
・トヨタアクア:PRNDB
・トヨタルーミー(ダイハツトール):PRNDSB(ターボ車:PRNDB)
・トヨタアルファード、ヴェルファイア:PRNDM(HV車:PRNDS)
・トヨタプロボックス、サクシード:PRNDSB(HV車:PRNDB)
電子式セレクター型のマツダMX-30のセレクターレバー
■電子式セレクター型
・トヨタハリアー:PRNDM(HV車:PRNDS)
・レクサスUX300e:PRNDB
・日産リーフ:PRNDB(セレクター上部にPスイッチ)
・日産キックス:RNDB(Pスイッチ独立)
・日産セレナe-POWER:RNDB(Pスイッチ独立)、(ガソリン車:レバー式 PRNDL)
・マツダMX-30:PRND
ホンダeのボタン型のセレクターレバー
■ボタン型
・ホンダアコード:PRND
・ホンダe:PRND
ダイヤル式のジャガーXFのシフトレバー
■ダイヤル型
・ジャガーXJ、XF、Fペースほか:PRNDS
・ランドローバー・レンジローバー:PRNDS
個々の仕様をかいつまんで見ていくと、トヨタライズ(ダイハツロッキー)のCVTでは、Sポジションでは坂道走行用として変速のアクセル開度などによる自動制御、Mポジションではマニュアル操作による7速シーケンシャルモード制御を実現している。
マツダのMX-30は同社で初となる電子式セレクターを採用したことは、将来の電動化への対応といえる。
電子式セレクターを採用するEVでは、Pポジションをリーフのようにセレクター上に組み込むなど、Pポジションを別途にボタン式として用意している例も見られる。
ここではとり上げなかった日本メーカーの高級車やスポーツカーメーカーを含む輸入車ブランドのモデルでは、リンケージを介さないバイワイア方式の電子式セレクターが多数を占めることは周知の通り。
たとえば、BMWは最新の4シリーズを含め、センターコンソール奥に電子式セレクターを配置したうえで、Dポジション横にM/Sを設定。Pボタンを別個に設置している。
余談ながら、ポルシェのEVであるタイカンは、ステアリングそばに“極小”のシフトレバーをPポジションのボタンとともに設置している。
ほかのドイツ勢が量産EVモデルのシフト機構を量産車の設計に準じた仕立てとするのに対して、独立したモデルとして大胆ともいえるデザインを施したのは個性の打ち出し方として興味深い。
ATやCVTのセレクターは使いやすさこそ第一
ダイハツタフトにはSポジション、Bポジションがある
シフト機構のBポジションがハイブリッドシステムとCVTの普及が進むにつれて増加してきたことは明らかで、ハイブリッドとエンジン単独のふたつの仕様の共通化を図ろうとすれば、あらかじめBポジションを共通設定としたほうが、コスト面でも都合が良いはずだ。
Sポジションについては、Mポジションにとって代わられると同時に、前述のようにボタン操作で走行モードを変更可能とすれば用は足りるので、今後は軽自動車でも見直しが図られるかもしれないが、シフトポジションの選択が認識しやすいことは日常の使い勝手では見逃せない。
ダイハツのようにCVTでもSポジションとBポジションの両者を残しているのは、セッティングの差を含めて、機能的な慣れの問題を考慮した設定といえるかもしれない。
スズキの軽自動車のように、雪道などの悪路を走行する場合などで低速を担うLポジションをジムニーやハスラーはもとより、スペーシアの標準仕様などでも設定を残している。
このようにシフトポジションの設定やレバー型や電子式セレクター型などの違いこそあれ、最終的にはドライバーが認識しやすく操作しやすいことがなにより重要なことはいうまでもない。
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