現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 日産はなぜ[キューブキュービック]みたいな小さい3列シート車を作らないのか?

ここから本文です

日産はなぜ[キューブキュービック]みたいな小さい3列シート車を作らないのか?

掲載 27
日産はなぜ[キューブキュービック]みたいな小さい3列シート車を作らないのか?

 2024年6月に登場した、ホンダの3列シートコンパクトカー「フリード」。販売は好調で、登場翌月から3か月間の登録台数は、7月8,442台、8月6,990台、9月8,943台と、前年を大きく上回る販売を記録、ホンダ車において(軽を除いては)もっとも売れているモデルだ。

 3列シートコンパクトカーといえば、トヨタの「シエンタ」も大人気。ただ、人気ジャンルであるにもかかわらず、現在ラインアップされているのはこの2モデルのみ。かつては日産にも、「キューブキュービック」という3列シートコンパクトカーがあったが、(キューブキュービックが)2008年に廃止となったあとは、日産はこの人気ジャンルに参戦すらしていない状況だ。

日産はなぜ[キューブキュービック]みたいな小さい3列シート車を作らないのか?

 シエンタもフリードも、強力なライバルではあるが、「出せば売れる」人気ジャンルに、なぜ日産は参戦しないのか。出せない理由でもあるのだろうか。

文:立花義人、吉川賢一
写真:NISSAN、TOYOTA、HONDA

【画像ギャラリー】実用性はイマイチながらデザイン性は高かった、日産の3列目シートコンパクトカー「キューブキュービック」(9枚)

■年間15万台規模の需要がある大人気カテゴリ

2024年6月にデビューした新型フリード。標準車のエアーと、アウトドアテイストが与えられたクロスターの2つをラインアップ。プレーンなエクステリアデザインがカッコいいと評判が高い

 1990年代後半から普及し始めた3列シート車。ファミリー層を中心に人気が集まり、2000年以降、一大ブームが巻き起こった。ストリーム、ウィッシュ、ラフェスタ、ステップワゴン、ノア/ヴォクシー、セレナ、エルグランド、オデッセイ、アルファードなど、様々なサイズの3列シート車が登場した。

 これら3列シート車のなかでも、子育て層から絶大な支持を集め続けてきたのが、フリード(先祖はモビリオ)やシエンタのような、コンパクトなサイズの3列シート車だ。

 全長4300m、全幅1700m、全高1700m程度というコンパクトなボディサイズながら両側スライドドアをもち、3列目シートも、「緊急時はこれならば十分」と感じられるギリギリの広さを持っている。小回りがきき、運転もしやすいので、運転が不慣れな人にもやさしい。

 車内も広く、乗り降りもしやすくて、荷物もたくさん積める。しかも価格もミドルクラスミニバンよりも安く、見た目もよく、4人家族にはちょうどいいパッケージングだ。

 実際に過去3年の登録台数を振り返ると、2021年はフリード69,557台/シエンタ57,802台、2022年はフリード79,525台/シエンタ68,922台、2023年はフリード77,562台/シエンタ132,332台とよく売れており、常に登録車販売台数ランキングでトップ10入りをしている。こんなに売れるジャンルであるにもかかわらず、日産はモデル投入すらしていない。

ヨーロッパ車のような雰囲気でデザイン性も高いシエンタ。売れているモデルだけあり、実用性やユーティリティも文句なしの出来だ

■このクラスで求められる実用性と扱いやすさに欠けていた、キューブキュービック

2003年登場のキューブキュービック。このクラスで求められる実用性と扱いやすさに欠けていたことで、販売は振るわなかった

 日産の3列シートコンパクトを考えるうえで外せないのが、キューブキュービックの失敗だ。2002年10月に登場した2代目「キューブ」から遅れること11ヵ月の2003年9月、日産は、キューブのホイールベースを170mm伸ばし、折り畳みできる3列シートを装備した「キューブキュービック」を追加した。

 日産としては、デザインがよく、当時大人気となっていた2代目キューブをベースとすることで、当時すでに人気モデルだったモビリオやシエンタの対抗馬にしたかったのだろう。しかし結果は、見事に撃沈。

 「キューブ(=立方体)」のデザインを優先したことで、ホイールベースをあまりのばすことができず3列目シートが激狭だったこと、そして、後席ドアがスライド方式ではなくヒンジ式だったことなどが原因だと思われる。キューブキュービックは、このクラスで求められる実用性と扱いやすさに欠けていたのだ。

キューブキュービックは独特のデザイン性を損なうことなく3列シートを採用したことが最大の魅力だが、肝心のそのシートの使い勝手は最悪だった

【画像ギャラリー】実用性はイマイチながらデザイン性は高かった、日産の3列目シートコンパクトカー「キューブキュービック」(9枚)

■3列シート車はセレナがあればいい、と考えているのでは

 ただ、いま日産がこの3列目シートコンパクトカーにチャレンジしないのは、キューブキュービックの失敗がどうこうではなく、やはり、3列目シートコンパクトカーは、国内専売モデルとなってしまうことにあるのだろう。日産はここしばらく、海外で売れるクルマ以外は登場させていない。

 道路や駐車場は狭い日本ではコンパクトカーが人気の中心だが、コンパクトでありながら、いざというときにしっかり多人数乗車ができたり、家族でレジャーに出かけたりといろいろ便利に使えるマルチパーパスさも求められる。何でもかんでも詰め込むのは日本独特の傾向であり、大人数ならばそれなりの大型車を求める海外では、そんなコンパクトカーは求められない。

 日産としては、日本で絶対に売れる確証がもてないクルマには、余計なリソースを割くことはできないのだろう。コンパクトSUVである「キックス」も、もともとは南米や東南アジアをターゲットに開発されたものであり、タイ生産のものが日本に入ってきている状況だ。e-POWERはいいパワートレインだと思うが、キックスのデザインやパッケージングがなんだか日本人にはしっくりこないと感じるのはそのせいだろう。

 新型のコンパクト3列シート車を出したところで、既存のノートやノートオーラ、サクラの販売台数が減るだけ、という懸念もあるのかもしれない(そんなことはないと思うが)。こうしたことから、日産は、3列シート車はミドルクラスミニバンのセレナがあればいい、と考えているのだろう。

◆     ◆     ◆

 キューブのような面白いデザインとパッケージ性能でしっかりと実用性のある3列目シートモデルをつくることができれば、またこのカテゴリを盛り上げてくれる面白いモデルとなると思う。日本市場は世界的に小さい規模かもしれないが、日産の内田誠社長は社長就任時の会見で「日本は日産にとってのホームマーケット、非常に重要なマーケットだ」としていた。日産はもっと自信を持っていいと思う。ぜひともチャレンジをしてほしい。

【画像ギャラリー】実用性はイマイチながらデザイン性は高かった、日産の3列目シートコンパクトカー「キューブキュービック」(9枚)

投稿 日産はなぜ[キューブキュービック]みたいな小さい3列シート車を作らないのか? は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

アルファードより巨大!! ベンツRクラスが未だ700万超えの衝撃
アルファードより巨大!! ベンツRクラスが未だ700万超えの衝撃
ベストカーWeb
ホンダらしさ全開で素敵じゃない!! 1代限りで姿を消した[エディックス]の評価が低すぎる問題について
ホンダらしさ全開で素敵じゃない!! 1代限りで姿を消した[エディックス]の評価が低すぎる問題について
ベストカーWeb
日産の元高級車が100万以下で手に入るそうだぞ 中古で買うべき[初代フーガ]のオススメを教えちゃいます!!!!!!
日産の元高級車が100万以下で手に入るそうだぞ 中古で買うべき[初代フーガ]のオススメを教えちゃいます!!!!!!
ベストカーWeb
こんなEVならバカ売れ!? えーマジか? いまほしい電気自動車を突き詰めると[トヨタ ラウム]になっちゃうのよ!
こんなEVならバカ売れ!? えーマジか? いまほしい電気自動車を突き詰めると[トヨタ ラウム]になっちゃうのよ!
ベストカーWeb
もう待ってられん! 日産よ! 日本には[ブルーバード]復活が必要だ!
もう待ってられん! 日産よ! 日本には[ブルーバード]復活が必要だ!
ベストカーWeb
シエンタとフリードどっちがいいクルマ? 実力とデザインをガチ比較
シエンタとフリードどっちがいいクルマ? 実力とデザインをガチ比較
ベストカーWeb
こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】誰も知らないブーンベースの3列7人乗りミニバン[ルミナス]がフリードになれなかった理由
こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】誰も知らないブーンベースの3列7人乗りミニバン[ルミナス]がフリードになれなかった理由
ベストカーWeb
デュアリスはなんでヤリスクロスになれなかったのか
デュアリスはなんでヤリスクロスになれなかったのか
ベストカーWeb
ヴェゼル似の男前セダンいいじゃん! その名も[アメイズ]日本発売熱望! 全長3.9mのコンパクトセダンが激アツ! 
ヴェゼル似の男前セダンいいじゃん! その名も[アメイズ]日本発売熱望! 全長3.9mのコンパクトセダンが激アツ! 
ベストカーWeb
あえて“非スイスポ”の条件で100万円切りのMT車を探したら……CR-Zの前期型がイチ推しだった!!
あえて“非スイスポ”の条件で100万円切りのMT車を探したら……CR-Zの前期型がイチ推しだった!!
ベストカーWeb
すべての国産車が高くなるワケじゃない!? 名車になり損ねた国産スポーツ三菱GTO
すべての国産車が高くなるワケじゃない!? 名車になり損ねた国産スポーツ三菱GTO
ベストカーWeb
マツダ「3列シートミニバン」復活する!? スライドドアの新型「ビアンテ」「プレマシー」はあり得る? 待たれる「“魂動”ミニバン」登場の可能性とは
マツダ「3列シートミニバン」復活する!? スライドドアの新型「ビアンテ」「プレマシー」はあり得る? 待たれる「“魂動”ミニバン」登場の可能性とは
くるまのニュース
今では考えられないよね [オープン]まで作ってしまったリーザを覚えている?
今では考えられないよね [オープン]まで作ってしまったリーザを覚えている?
ベストカーWeb
ダイハツ斬新「“4列9人乗り”ミニバン」に大反響! 全長4m&“対面シート”に「ギチギチやん」「小さな護送車」の声も! “5速MT”で操る「グランマックス」尼国仕様に熱視線!
ダイハツ斬新「“4列9人乗り”ミニバン」に大反響! 全長4m&“対面シート”に「ギチギチやん」「小さな護送車」の声も! “5速MT”で操る「グランマックス」尼国仕様に熱視線!
くるまのニュース
なぜ「“背の低い”ミニバン」不人気になった? 「ウィッシュ」「ストリーム」はめちゃ売れたのに… 今では「超苦戦中」! スタイリッシュな「低高ミニバン」消えた理由は
なぜ「“背の低い”ミニバン」不人気になった? 「ウィッシュ」「ストリーム」はめちゃ売れたのに… 今では「超苦戦中」! スタイリッシュな「低高ミニバン」消えた理由は
くるまのニュース
日産セダン復権の狼煙!!! 「走りの日産」ファンは待っているぞ!!! 新型EVセダン[N7]の全貌にせまる
日産セダン復権の狼煙!!! 「走りの日産」ファンは待っているぞ!!! 新型EVセダン[N7]の全貌にせまる
ベストカーWeb
低燃費性能 低価格化…… 永遠のライバルのダイハツ VS スズキ 軽ガチバトル徹底研究【10年前の再録記事プレイバック】
低燃費性能 低価格化…… 永遠のライバルのダイハツ VS スズキ 軽ガチバトル徹底研究【10年前の再録記事プレイバック】
ベストカーWeb
敵ながらアッパレ!! トヨタ販売現場を唸らせる憎いライバル車たち
敵ながらアッパレ!! トヨタ販売現場を唸らせる憎いライバル車たち
ベストカーWeb

みんなのコメント

27件
  • e830rock
    日産は日本市場を捨ててる。トヨタ、スズキ、ホンダ、ダイハツに(国内の)新車販売台数で負けるほど落ちぶれてるのに、新型車を投入する予算もないのだろう。
  • モンキーA
    日産の欠点は、顧客ニーズに応えない事。「こんな自動車販売しました。買って下さい。」では販売は伸びない。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

152.3181.4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

17.047.0万円

中古車を検索
キューブキュービックの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

152.3181.4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

17.047.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村