自動車版安全ミシュランガイド「自動車アセスメント」
text:Kenichi Suzuki(鈴木ケンイチ)
【画像】2020年度自動車アセスメントのトップ2【レヴォーグ/ハリアーを詳しく見る】 全142枚
editor:Taro Ueno(上野太朗)
市販されるクルマの安全性能を、ユーザーが比較することは難しい。そのために用意された制度が自動車アセスメントだ。
JNCAP(Japan New Car Assessment Program)とも呼ぶ。
これは、自動車メーカーとは関係のない第三者機関が、販売されているクルマの安全性を実際にテストするというもの。
実際にクルマをバリアなどにぶつけて、そのこわれ方などを計測して点数化する。
点数とすることで、メーカーを超えたライバル車同士の安全性能が比較できるようになるのだ。
具体的には、独立行政法人自動車事故対策機構(通称:NASVA)がテストをおこなっている。NASVAは、自賠責保険/自賠責共済の運用益で賄われているため、自動車メーカーへの忖度はいっさいない。
ちなみに、市販されるクルマは、国土交通省によって最低限度の安全性が確認されている。
しかし、それはあくまでも最低限度の安全性であり、どれだけ高いレベルなのかは評価していない。
一方、自動車アセスメントは、安全性の上位を競うもの。美味しいレストランを紹介するミシュランガイドのような存在なのだ。
圧倒的なまでのスバルの成績の良さ
この自動車アセスメントにおいて、飛びぬけた成績をおさめるメーカーがある。
それがスバルだ。先だって(2021年5月25日)に発表された最新の2020年度(令和2年度)の自動車アセスメントでは、スバルのレヴォーグが最高得点を獲得し、最優秀であることを意味するファイブスター大賞が授与された。
また、2年前の2018年度(平成30年度)にはフォレスターが衝突安全性能評価で最高得点(クラウンと同点)と衝突安全性能評価大賞を受賞。
さらに、2016年度(平成28年度)はインプレッサ/XV、2014年度(平成26年度)にはレガシィが、それぞれ最高得点を得ている。唯一、残念なのはBRZで、5つ星(208点)が満点のところ、4つ星で168.8点という結果だ。
5つ星で199.7点のインプレッサ/XVに遠く及ばないという結果となっている。
とはいえ、レヴォーグをはじめ、インプレッサ/XV、フォレスター、レガシィという、スバルのラインナップの大半が衝突安全性能のテストで最高得点を得ている。
第三者による公平なテストの結果を鑑みれば、「日本で一番安全なクルマはスバル」と言って間違いないだろう。
スバルに次いで好成績なのがトヨタ
では、スバルに次ぐ地位となるメーカーは、どこになるのだろうか?
2020年度(令和2年度)のトップは、スバルのレヴォーグで190点満点の186.91点。満点の98%であった。
その次の成績は、トヨタのハリアーで、177.68点で満点の93%だった。
そして2019年度(令和元年度)は、衝突安全性能評価でトヨタのRAV4が最高得点を獲得している。
次点はホンダのNワゴン/Nワゴン・カスタムだ。軽自動車でありながら衝突安全性能で上位に食い込んだのは、特筆すべきこと。
軽自動車としては突出した安全性能だ。
さらに年度をさかのぼり、2018年度(平成30年度)の結果はどうかといえば、フォレスターとクラウンの2台が同点で最高得点を獲得。それに続いたのが三菱のエクリプス・クロス。その次がトヨタのカローラ・スポーツであった。
つまり、今年の発表分ではハリアー、去年はRAV4、そして一昨年はクラウンと、トヨタが3年連続で顔を出している。
そういう意味で、近年でスバルに次ぐ、「安全なクルマ」というのはトヨタ車といっていいだろう。
ちなみに2019年度と2018年度の衝突安全性能評価にはスバル車のテストはおこなわれていない。
2017年以前の成績ではマツダが目立つ
NASVAによる自動車アセスメントは2018年度(平成30年度)以降に評価方法を変化させている。
そのため、2017年度(平成29年度)以前の評価をまとめた資料も発表している。その資料からランキングを作ってみると、以下のようになる。
1位 スバル・インプレッサ/XV:199.7点
2位 マツダCX-8:193.9点
3位 スバル・レガシィ:188.8点
4位 マツダCX-3:188.2点
5位 マツダCX-5:187.3点
6位 トヨタC-HR:185.8点
7位 マツダ・デミオ:185.7点
8位 三菱アウトランダーPHV/アウトランダー:184.6点
9位 ホンダNボックス/Nボックス・カスタム:184.1点
10位 スバル・レヴォーグ(先代)/WRX:183.8点
驚くのは、トップこそスバル車でありながらも、ベスト10のうち4台がマツダ車となっていることだ。
この数は、スバルの3台よりも多いのだ。
「人馬一体の走り」など、スポーティさが前面に出るマツダではあるが、その反面、安全性能でも優秀ということだ。
面白いもので、マツダ自身が「うちのクルマは安全性も高いですよ」といっても、なかなか信じてもらえないだろう。
しかし、第三者が実施する自動車アセスメントの結果を見れば、また別。
しっかりとしたモノづくりを続けていれば、いつかは、おのずと、そのおこないが認められるということだろう。
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