パナメーラやAMG GTや911がライバル。マイチェンした8シリーズのグランクーペとクーペの熟成レベルとは?
掲載 carview! 文:木村 好宏/写真:Kimura Office 97
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2018年に登場したBMWの「8シリーズグランクーペ(G16)」がフェイスリフトを受けた。4ドアクーペのセグメントでは「ポルシェ パナメーラ」や「メルセデスAMG GT4」と競合するが、ここドイツでは「8シリーズ」はスタイルに定評があり、発表直後の2019年にはもっともポピュラーな自動車専門誌「アウトビルト」のゴールデン ステアリングホイール賞で「もっとも美しいクルマ」に選出されている。ロングノーズ&ショートデッキの典型的なFRプロポーションが、ダイナミックでスポーティなデザインとして人気なのだ。
フェイスリフトは今年の初めに発表されたが、半導体不足、さらにはロシアの侵攻によってウクライナで生産されていたワイヤーハーネスなどが欠品、生産の立ち上がりが遅れ、今回ようやく試乗するチャンスが到来した。
2022年モデルのエクステリアデザインはほとんど変わらず、もっとも大きな変更はこれまでオプションであったMスポーツパッケージと「アイコニックグロー」と名付られている照明付きキドニーグリルが標準装備となり、さらに試乗車はM社の50周年を記念するエンブレムが前後に装着されている。
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試乗車はサンレモグリーンメタリックと呼ばれるBMWインデュヴィジュアルにある濃いグリーンの落ち着いたボディカラーとダークグレーレザーのインテリアの組み合わせで、いかにもジェントルマンGTに相応しい雰囲気をもっていた。
控えめな外観とは裏腹にそのパフォーマンスはトップクラスで、長いボンネットの下には4.4リッターV8ガソリンエンジンが搭載され、最高出力は530馬力、最大トルクは750Nmを発生する。組み合わされるのは8速オートマチックで4輪を駆動、0-100km/hは3.9秒、最高速度は250km/hでリミッターが介入する。
やや太めのステアリングホイールを握り、操作系を確認するとインフォテイメントシステムはカーブドディスプレイではなくBMW OS8で、ドライバー正面のコックピット画面に加えて、ダッシュボード中央にはこれまでトップモデルの「M8」専用であった12.3インチのインフォテイメントモニターが標準装備されている。iDriveダイヤルは健在で、8速ATセレクトレバー脇のコンソールにレイアウトされている。
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ドライブプログラムはコンフォートモードを選択してスタート。空車重量1995kg、全長5.08mの4ドアクーペは僅かにスロットルペダルを踏み込むと、独特の低いV8サウンドを響かせながら他の交通をあっという間にリードする。
アウトバーン上の160km/h超巡行では安定した直進性と4WSによるレーンチェンジ時のスタビリティ、そして確かなブレーキ性能を確認できた。装着されていたタイヤはフロントに245/35R20、リアは275/30R20サイズのBSポテンザで、スピードを問わず快適な乗り心地、そしてスポーティなドライブフィールを提供してくれた。
また南ドイツにある様々なコーナーを含んだ見通しの良いカントリーロードに入りスポーツモードを選択すると、1.9mの車幅にも関わらず一層シャープで路面感覚が研ぎ澄まされたステアリングによってスポーツドライブの楽しさを発揮した。もちろんノーズには重いV8を搭載しているので若干のアンダーは出るが、後輪ステアの助けによって驚くほど軽快でスポーティなハンドリングを見せてくれたのである。
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今回はおよそ1500kmのロングツーリングを敢行したが、まさにGTカーに相応しい快適なロングツーリングを提供してくれた。ただトランク容量は440リッターとミッドサイズセダン並みの数値で必要にして十分なサイズであるものの、敷居が高く荷物の出し入れにはちょっと苦労した。開口部を狭くしてボディ剛性を確保するためだと思うが、高いスタビリティとのトレードオフであるとしても、ちょっと納得がいかない部分である。
BMWはフェイスリフトのことをLCI(ライフサイクルインパルス)と呼ぶが、今回試乗したBMW M850i xDriveグランクーペは内外装デザインから見ると「インパルス(衝撃)」を与えるほどの内容と言えるかどうかは疑問である。一方、アップグレードされた標準装備品を考えるとお買い得で、古典的で完成されたFRスタイルをもち、これで最後かもしれないV8エンジンと熟成されたシャーシによる走り、EV化の波に呑まれずに長く付き合うには魅力的な一台である
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また、この4ドアクーペの試乗後に同じパワートレーンを搭載した「M850i xDriveクーペ(G15)」をテストするチャンスも得た。
ボディサイズは全長4851×全幅1902×全高1362mm、ホイールベース2822mmで、空車重量は1930kgとグランクーペよりも23cm短く65kg軽いが、通常のドライブにおける操縦フィールは全くと言って良いほど変わらない。
ただし高速でのクイックターンではボディ剛性の高さ故に2ドアの方が僅かだがクイックでステアリングに忠実であった。それ以外ではトランク容量が10リッター少ないくらいで差は殆どなかった。
ファミリーやビジネス・ユースなど実用性を考えると4ドアのグランクーペが勝るが、パーソナルユースでライフスタイルを重視しつつ、ストイックなスポーツドライブを楽しみたいドライバーは2ドアクーペならではのエステティックな雄姿で「ポルシェ 911」と張り合うのも悪くはない。
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