北欧と中国が生んだ新生カーブランドは“手頃なボルボ”で若者を狙っている
掲載 更新 carview! 写真:編集部
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みなさんは「Lynk & Co(リンク&コー)」という自動車ブランドをご存知でしょうか。わずか2年前の2016年に立ち上げられたこの新興ブランドは、スウェーデンに本社や開発拠点を置く、ちょっとプレミアムな北欧ブランドであります。そんなLynk & Coが先週の金曜日、日本でニューモデル「03」のローンチイベントを開催するというので見てきたわけです。
Lynk & Coと言えば、ほぼボルボの技術&開発リソースを使って作られているというのも注目で、発表されたセダンの「03」も、ボルボ自慢の新世代プラットフォーム「CMA」がベース。というより、主要なコンポーネンツはまんまボルボ40シリーズで、ボディパネルや内装パーツなど、いわば表皮デザインを中心に差別化しています。Lを2つ重ねたようなデイタイムライトや、ポルシェにも通じるような強く張りのある面構成など、生まれたてのブランドながらアイデンティティもありそう。
会場となった富士スピードウェイはこの日、Lynk & Coの貸切。編集はわずか1周だけ許された本コースでの試乗で、小沢コージの助手席に乗っただけ(笑)という、なんとも歯切れが悪い感じですが、スムーズな1.5L直噴ターボ×7速DCTの加速、コージのステア操作にリニアに反応してそうな旋回フィールを見る限り、悪くは無さそう。40シリーズベースなら当たり前かも。
それより気になったのは内装で、ボルボの高級感とは違うけど、斬新な触感のソフト樹脂やグラフィックのパターン、洗練された全体の構成、フルデジタルメーターやセンターの大型インフォ画面などの装備も含めて、かなり欲しくなったかも。デザイン性は無理やり言うとMINIとかが浮かぶけど、よりボルボっぽい、モダンで質感も高そうな雰囲気でありました。
そろそろ「03」の価格が気になってくるところですが、夜8時近く、宴もたけなわの会場で発表された価格は、11.68万元(約190万円)~15.18万元(約250万円)。安いほうの価格が発表されると、500人近くが集まった屋外会場はいちだんと大きな「ウォーッ」という歓声に包まれました。しかも生涯製品保証、生涯ロードサービス、生涯コネクトが無料(驚)。この質感でこの価格帯。前代未聞の3大無料サービスの実現性も気になりましたが、確かにマジかというカマされ感はあります。
そして金額でお気づきかとは思いますが、「03」は今のところ中国専売のセダンなのでした。Lynk & Co、実は中国の自動車企業「吉利(ジーリー)ホールディングス」とボルボが出資するメーカーだったんです。さらに言えば、ボルボの乗用車部門を傘下に収めるのが吉利ホールディングス。約400名と言われる招待客もすべて中国のメディアやインフルエンサーたちで、見た感じその多くは20代の若者だったのではないでしょうか。…ほとんどの日本のクルマ好きが知らぬ間に、世界のクルマ情勢はめまぐるしく変化しているのかもしれません。
すでに「01」「02」という、同じCMAプラットフォームをベースにした2台のSUVが発売されていますが、これも現在は中国のみ。01は発売2分強でファーストロットの6000台をオンラインで売り切った記録を持ち、現在は2モデル合わせて月約1万5000台という販売規模。2020年には欧州で02を、2021年にはアメリカでも発売が計画されています。
中国国外の展開については、やはり実店舗ではなくオンラインで、アプリを介したシェアリング(オーナーが使わない時は有料で貸せる)や、サブスクリプション(月々定額で乗る)も想定しているとのこと。こうした立て付けによって価格を下げることも狙っているわけです。また、ファッションブランドを思わせる名前からも想像できるように、アパレルなどを先に売るようなブランディングスタイルも検討をしているといいます。
いずれにしても、すでに自動車メーカーがひしめき合うマーケットに参入するからには、記憶に残るような独自性や、時代を先取りするような感性が必要、というのが彼らの考え方。リーズナブルな若者のボルボというだけでなく、ミレニアル世代やその次の世代の人々にとって華を感じられるようなブランディング…その実験場としても、要注目なのかもしれません。
価格発表で絶頂を迎えた会場ですが、ダメ押しで2019年の世界ツーリングカー選手権から、03(Lynk & Co 03 TCR)で出場することも発表されました。タッグを組むのはボルボチームで2017年にチャンピオンを獲ったテッド・ビョークと、シアンレーシング。勝つつもりは満々ということでしょう。
それに、吉利の潤沢な資金をバックにアウディやホンダ、VWなどと繰り広げるバトルのパフォーマンス次第では、Lynk & Coのブランド知名度を一気に高める可能性もあるかも。ベースはボルボシアンレーシングだし、リアリティもありそうです。日本で売らないクルマを東京というか富士スピードウェイで発表した狙いにも納得であります。
最後に、ローンチイベントを通して印象に残ったのは「ブランドはこうやって作るんだ」と言わんばかりの物量お祭り作戦。富士スピードウェイ史上最も派手そうと言われた、巨大液晶パネルを何枚も組んだ舞台装置をはじめ、登壇者のプレゼンの上手さ、4泊5日で大挙して訪れた中国レポーターたちの若いパワーなどなど、勢いって大事なんだなあと妙に感心させられました。2020年には50万台を狙っているということですが、まずは一度、日本の一般道で試乗してみたい気がします。
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