AMG GT Sで富士スピードウェイを走る。果たしてその実力は?
掲載 更新 carview! 文:五味 康隆 /写真:菊池 貴之
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このモデルを理解するうえで、まずは通常のフロントエンジン&リア駆動の2シータークーペのフォルムに惑わされないことが重要。というのも、このモデルは完全なるフロントミッドシップモデル。だからこそ走るとクルマが小さく感じる俊敏かつ軽快さを備えているし、限界付近までは気軽に使いこなせるが限界直前を使いこなすのが難しい。
その中身の最重要項目に捉えるべきは、エンジン。圧倒的なパワーと扱いやすいトルク、そして高回転まで淀みなく吹け上がる特性と、アクセルの踏み込みはもちろん、戻し操作にも遅れずに回転が下がるダイレクトな反応、さらに言えば心を刺激する排気音。これらを備えた新開発の排気量4LのV8ツインターボは通常よりも55mmも低く搭載できるドライサンプ化を果たし、それをフロント車軸よりも全てを後方に搭載。ちなみにボンネットフードを開けると、通常のクルマのような位置にエンジンカバーが見受けられるが、その下には吸気系アイテムがあるだけで、エンジン本体はその後方に位置している。
これだけ後方に積めるのはトランスミッションを後方に持って行ったからだ。専門的にはトランスアクスルと呼ばれる手法だが、このモデルでは後輪車軸の後ろに7速のダブルクラッチトランスミッションを配置。言うなれば、前方のエンジンが発生した力を、一度最後尾まで持って行き、リアタイヤに戻している。こうしたレイアウトによって53:47の前後重量バランスが整い、4つのタイヤを自然に使いこなせるスーパーバランスが確立できる。さらに素材にもこだわった優れたボディ&シャーシが剛性と軽量を両立しているわけだ。
独自のエンジンマウントもマニアックな機構だ。激しい走りをする際には特殊な可変エンジンマウントを締め上げてエンジン振動を刺激的にダイレクトに伝えながら、エンジンをフロント周りの剛性を上げる構造体としても使っているのだ。逆に、街中などではエンジンマウントを緩めて振動を吸収して快適性を確保している。クルマで最も重い構造体のエンジンの動きを制御することで、驚異的な速さと乗り味を実現していると言えるだろう。
※走行中のモデルを中心に、輸送用の保護フィルムが貼ってあります。
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