レガシィ08モデルに試乗 アウトバック25XTに注目
掲載 更新 carview! 文:伏木 悦郎/写真:市 健治
掲載 更新 carview! 文:伏木 悦郎/写真:市 健治
そりゃそうなのである。もともとクルマの走りにとってタイヤは生命線。性能やキャラクターはともに最終的にはタイヤが握っている。世に数多(あまた)あるドライビングインプレッションは、タイヤの試乗記と置き換えても的外れではない。ことにダイナミックパフォーマンスに関する部分はそうである。
25XTでは、2400回転にトルクのピークがあるパワフルでハイレスポンスなターボエンジンに対応して、まず無駄な動きの除去から入っている。25mmのローダウンがその手始めで、グリップと乗り心地のバランスを優先したアスペックに対応してバネ/ダンパーを締め上げている。ボディ剛性やスポーツ4WDのセットアップについてはすでに定評のあるスバルのこと。エンジンとタイヤのパフォーマンスバランスが揃えば、このくらいは行くだろう。当然納得のレベルに25XTはまとまっていた。
25iをはじめとする従来のアウトバックシリーズは、オフロードやそれに近い使用環境が現実的な北米市場のニーズに応えた結果と考えられる。高めのグランドクリアランスやそれに起因するステアリングやサスペンションのある種ルーズなセットアップは、トータルパフォーマンスの追求から採用されたと見るのが妥当だろう。
これに対して25XTはオンロード指向に割り切った。普段からオフロードなどの自然空間とは無縁で、ほとんどが整備されたターマック走行に限られる日本のユーザーに対応すべく開発されている。このようなプランは、アウトバックの開発段階から検討されていたという。限定販売に名を借りた今回の方針転換は、次期型レガシィにつながる先行開発と考えると得心が行く。2.5Lターボやアイサイトの採用とともにモデル末期のプロモーションと捉えることもできるが、私は次期レガシィの開発の方向性をそれとなく暗示するビジョンが含まれていると想像している。
動力性能については、SOHCの25iでも不足を感じることは稀だろう。眺めの良い伊豆スカイラインの景観を楽しみつつ、ちょっとスポーティに走るという状況なら、パワーフィール、得られるスピードの両面で多くのアベレージドライバーの満足を得ることが可能だ。無闇にパワーを追う時代ではなく、今は足元を見つめ直す時代なのだ。
そんな感慨を抱きつつ25XTに乗り換えると、低速域からトルクの出方はスムーズだしパドルシフトを介しての加速フィールのテンポと厚みが違う。車高とサスチューンとタイヤの選定が奏功した正確さと安定性が期待できるハンドリングは「やはりこのセットアップを基本とすべきだ」と、アウトバックの商品特性を理解しつつも惹かれてしまった。
10.15モード燃費で3.0Rに対し14%、25iに対し23%マイナスとなる10km/Lというデータは、これからの時代を考えると重い現実となりそうだ。しかし、プレミアムブランドを目指すという意味では、25XTのコンセプトによって得られる上質な乗り味の方向性は排除しにくい。この点をどう折り合いつけるかが、次期型レガシィの成否を決する最大のポイントになると思う。
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