河口まなぶも胸キュン! Fiat500 1.2POPに試乗
掲載 更新 carview! 文:河口 まなぶ/写真:齋藤 正
掲載 更新 carview! 文:河口 まなぶ/写真:齋藤 正
それにしてもチンク、見た目はもちろん走りが秀逸。どこで乗っても楽しいが、実はその理由が歴然とある。
一番の驚きは筑波サーキットだった。その時は「かつてこんなにタイムが遅いのに、こんなに楽しいクルマがあっただろうか!?」と、声を大にして叫びたいほどだった。見た目からすればサーキットという限界域では全く頼りなさそうなチンクだが、実は日本のコンパクトカーなど寄せ付けぬ骨太さと、サーキットでも楽しく何周でも走りたい! と思わせるだけのハンドリングを持っていた。これには本当に目鱗。2008年最大の事件、といってもいい出来事だったのだ。
そして僕は思った。なるほどチンクが街中であんなに楽しくて気持よいのは、こうした限界域での確かな実力があったからなのかと。そう、チンクでサーキットなんて、このクルマを買う人は絶対に走らないだろう。しかし走りにはこだわりのある国のクルマ。例え大衆車であっても、そこまで作り込んでいる上に、イタリア人ならではの快楽の追求をも忘れていなかったわけだ。ちなみに冒頭に「毎日がハッピー!」と書いた理由はこの部分によるところも大きい。こんな走りを毎日味わえたら、誰だって笑顔になれるはず。
そしておそらくチンクの走り以外の部分、つまりデザインに関しても、不思議と愛着がわき、38歳のオヤジが思わずカワイイとのたまってしまえる理由が歴然とあるに違いない。果たしてそれが何なのか? 考えるとそれは走りで見つけたように簡単には見つからないのだが、おそらくはイタリアという国ならではの芸術への追求という下敷きがあるからこそ、こんな愛らしい姿形が作れるんじゃないか? と思う。
それに何より、イタリア人にとってクルマは大切な“相棒”であって、クルマは道具と考えることの多い日本人とは明らかに温度差がある。とするならば、クルマへの愛の違いが、デザインにも表れているのかもしれない。なんて、ロマンチックに考えたりしてしまう自分がいること自体、凄いこと。そんなこと考えさせるクルマなんてなかなかいない。
というワケで、始まりから終わりまで僕はチンクにひと目ボレだった、という話。でも、マジメに、こんな気持ちにさせてくれるクルマ、他にない。そういう意味ではとても貴重な愛すべき存在。日本の自動車メーカーの皆さん、その辺りをよ~く研究してくださいませ。
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