F12ベルリネッタで箱根へドライブ<後編>
掲載 更新 carview! 文:吉田 匠/写真:菊池 貴之
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タイトベンドの連続を走り終え、視界が開けたところで右に進路を採って道幅が明らかに広くなると、そこが箱根スカイラインである。箱根スカイラインもそれに続く芦ノ湖スカイラインも、変化に富んだアップダウンと中速コーナーが続き、道幅も適度な広さがあるから、あらゆるサイズのスポーツカーでドライビングを愉しむことができる。
フェラーリF12はそこを、2速と3速、ときには4速を使って駆け抜けていくが、正直なところ、中速ベンドからの脱出に際して740psを絞り出す6.3リッターV12に全開を与える蛮勇を僕は持ち合わせていないので、エンジンの持てる力のすべてを使い切って、と表現するわけにはいかない。けれども、そのパワーの80%以上を、ときには90%近くを駆使して走っても、コーナー脱出時のスロットルワークさえスムーズにやれば、F12ベルリネッタはパワーを持て余すことなく、その挙動をドライバーのコントロール下において、コーナーの連続を舐めるように走り抜けていく。しかもドライバーは、何物にも代え難いV12のミュージックを常に耳にしながら、である。さらに、カーボンセラミックローター標準装備のブレーキが、軽い踏力で強力にスピードを殺してくれるのも心強い。
そんなカーブのひとつ、上りの長い左コーナーに2速のスロットルオフで進入し、アペックスを過ぎたところで意図的に深めのスロットルを与えたら、さしものパイロットスーパースポーツを履いた後輪もズルッとアウトに流れる挙動を見せた。けれども、E-DiffやF1-TracそれにESCといった電子制御ハンドリングデバイスが絶妙に作動して、そのスライドを過大なものに発展させず、結果としてF12ベルリネッタは進むべき方向にノーズを向けて猛然と加速していく。599以前のフロントエンジンGTより重心が低くなったことを意識させる腰の据わったコーナリングフォームも、F12の大きな魅力だといえる。
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