世界的なEVシフトの中に潜むもっとも危険なこと【前編】
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗
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そんななか、注目すべきなのが中国とアメリカの法規制だ。今後、世界第1位と第2位の市場規模を誇るこの2国で自動車ビジネスをしていくには一定以上のEVを売らなければならなくなる。両国を合わせれば年間4000万台を超える巨大マーケットだけに(日本は490万台)、そのインパクトはとてつもなく大きい。世界中の自動車メーカーが次々にEVの投入計画をたてている最大の理由はここにある。
さて、ここからが本題だ。上記の事情を踏まえた上で、そもそもなぜEVなのか? ということを考えていこう。たしかにEVは走行段階では排気ガスを一切ださない。そういう意味ではゼロ・エミッションだが、電気は作るものだと考えると、実はゼロ・エミッションではないことがわかる。太陽光や風力といった再生可能エネルギー、もしくは原子力で発電するのであればエミッションは大幅に減らせるが、現在日本の発電量の84%は火力発電が占める。そう、EVに排気管がないのは、火力発電所の煙突が肩代わりしているからである。
そこで知りたくなるのが、果たしてEVがCO2削減にどの程度貢献するのか、ということだ。大きく貢献すると言う人もいるし、いやいやいまの日本は火力発電がメインだからかえってCO2排出量は増えちゃうよ、と言う人もいる。本当のところはどうなのか? それを知るには、ユーザーが実際に走ったときの実燃費(電費)をもとに計算するのが有効だろう。
比較したのは現行プリウス(ハイブリッド)と現行日産リーフ。プリウスは走行段階でのCO2発生量にガソリン製造時のCO2発生量を加えた値、リーフは発電所が発生するCO2排出量をもとに算出した。細かな計算過程は省くが、プリウスの燃費を22km/L、リーフの電費を7km/kwh、発電のライフサイクルCO2排出量を566g・CO2/kwh、ガソリン精製時のCO2排出量を407g・CO2/Lとして計算すると、1km走行あたりのCO2排出量はプリウスが124グラム、リーフが81グラムとなる。その差は約50%。プリウスとの比較でさえこうなのだから、普通のガソリン車だとさらに違いは大きくなる。
もっとわかりやすく言うなら、現状の日本の発電ミックスでいくと、ガソリンで走るクルマは実用燃費が30km/Lを超えてこなければ、EVと同等のCO2排出レベルにはならないということだ。もちろん、EVにも短い航続距離、高い車両価格、充電待ちといった課題はあるが、火力発電が84%という現状の発電割合を維持しても、日本においてEVにCO2削減効果があるのは間違いない。
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