290万円の「デリカミニ」登場で“価格天井”が崩壊。なぜ軽自動車の“高価格化”が止まらないのか

三菱 デリカミニ

300万円級が一般化すれば…軽自動車の自滅が始まる

軽自動車の価格を押し上げている最大の要素が、ターボエンジンとSUV的外観だ。

デリカミニはNAモデルでも価格は高めだが、ターボ系はとくに高い。理由は明快で、小排気量ターボは熱負荷が大きく、インタークーラー、冷却系、排熱処理デバイス、触媒、耐熱素材など、ありとあらゆる部分が割高になる。

そこに、以下のようなSUV的な装備が加われば、さらにコストが増す。

・大径タイヤ／専用ホイール
・樹脂フェンダー類の追加
・ボディ補強
・専用内装パーツ
・高耐久の足まわり構造

こうした“積み上がる要素”が、デリカミニ290万円という価格を生み出した。つまり、現在の軽自動車市場では「安全装備＋ターボ＋SUV的デザイン」＝200〜280万円台が現実的な価格帯なのである。

デリカミニの290万円超えは、軽自動車の価格構造が“限界突破”した象徴として語られがちだが、実は技術的にも市場的にも“必然の帰結”である。軽自動車でありながら安全性・SUV性能・質感・静粛性・存在感を追求すれば、この価格に到達しても不思議ではない。

しかし、これを“普通”と捉えるべきではない。多くのユーザーが心理的に受け入れられる上限は240〜250万円前後ではないだろうか。デリカミニのような“290万円級の軽”が増えれば、市場は確実に登録車へ流れる。メーカーもそこを理解しているはずだ。

軽自動車の200万円超えは必然だが、300万円級が一般化すれば市場が崩壊する。一部の熱烈なファンは価格に関係なく、お気に入りの「安全でターボエンジンを積んだSUVルック」のモデルを選ぶかもしれない。だが、多数の支持を得られなければ、モデルとしての継続が難しくなる。

軽自動車の進化と価格は、いままさに“持続可能なライン”を見極める局面に来ているといえる。

（終わり）

（写真：三菱、トヨタ、日産、ホンダ）