ボルボV90クロスカントリーの、SUVでもワゴンでもないカテゴリーが来ている
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:望月 浩彦
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:望月 浩彦
走りの部分でいちばん気に入ったのがゆったりとした乗り味だ。V90も非常に快適なクルマだが、V90クロスカントリーはさらに足回りがしなやかで、荒れた路面でのタイヤからの突き上げも小さい。フワフワというほどの柔らかさではないけれど、徹頭徹尾フラット感を保つのではなく、足を適度にストロークさせながら路面を舐めるように走っていく。この優しい感覚がとても気持ちいい。850よりさらに前の、車体が四角かった頃のボルボの乗り味を思い出す人も多いのではないだろうか。
なお、試乗車のリアにはオプションのエアサスペンションが付いていた。エアサスといっても、スイッチ操作で硬さや車高を替えるタイプではなく、重い荷物を積んだときにリアが沈み込むのを防ぐ役割を果たす。V90クロスカントリーどうしで比較試乗していないので言い切ることはできないが、エアサスによって重積載時の沈み込みをカバーできるなら、その分、後輪のスプリングレートを下げることができ、それが優しい乗り味に貢献する可能性は大いにある。
ステーションワゴンをベースに車高を引き上げたクロスカントリー。かつては本格的SUVをラインナップしていないメーカーの苦肉の策という意味合いがなくはなかった。しかしボルボにはいまやXC90があり、XC60がある。本格SUVをもつボルボが、なぜクロスカントリーを続投してきたのか。今回の試乗を通して強く感じたのは、冒頭にも書いた「ステーションワゴン以上、SUV以下」という絶妙な立ち位置だ。「SUVには興味があるけど背が高いクルマはちょっと」とか「ステーションワゴンの使い勝手とSUVスタイルの両方が欲しい」と思っている人に、クロスカントリーは最適なソリューションを提供する。
さらに、空前のSUVブームのなか僕が思うのは、いまSUVを買っている人たちは、いったい次にどんなクルマを選ぶのだろうということだ。セダン、ワゴン、ハッチバック、ミニバン、スポーツカー・・・世の中にはたくさんのジャンルのクルマがあるが、ポストSUVを考えた場合、クロスカントリーのようなクルマは案外有望なのではないか。メルセデスがEクラスベースの「オールテレーン」を投入してくるのも、ひょっとしたらそんな狙いがあるのかもしれない。
デザインのよさやハードウェアの完成度、3つの世界初を含む豊富な安全装備など、V90クロスカントリーの魅力は多岐にわたるが、古くて新しい将来有望なカテゴリーというコンセプトにも大いに注目したい。
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