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「女性らしいデザイン」のクルマはインスタ世代の若者に響かない

「女性らしいデザイン」のクルマはインスタ世代の若者に響かない

写真:itakayuki

スマホ時代の若者のセンスが磨かれていることに気づかなければ

ところが、自動車メーカーが送り出す「女性らしいデザイン」のクルマは、昔ながらのキャラクター商品をいまだに「可愛いでしょう」と押し付けているような気がしてならない。とある軽自動車は私が高校生のときに初代が発売されて、そのときには「軽自動車しか買えないならこれに乗る!」と入れ込んでいたものだが、社会人なったいまは大きな魅力を感じなくなってしまった。以前もコラムに書いたが、同世代の女友達は新型ジムニーを「可愛い」と言っていたし、私も同じ気持ちだ。クルマを自由に買えるようになった大人の女性は「女性らしいデザインを謳うような単純なキャラクター商品」には魅力を感じないのである。

とくにキャラクター商品が全盛期だった私たちのような世代にこそ、いわゆる女性ターゲットのクルマは辛うじて受け入れられていたのかもしれないが、いまの若い人たちの感覚はさらに変わってきていると思う。生まれた時からインターネットやスマートフォンが当たり前に存在して、世界中のありとあらゆるものを、好きな時に好きなだけ見ることができる世代。インスタグラムで世界の著名人やモデル、アーティストをフォローして、それをスクロールして眺めているだけでも、圧倒的にセンスは磨かれていくはずだ。こういった世代にクルマに興味を持ってもらうためには「女性らしいデザイン」などを議論している場合ではなく、日本の自動車デザイン自体の底上げが必要だと思わないだろうか。

もちろん自動車のデザインはキャラクター商品のように「プリントを変えるだけ」ということをできないのは分かっている。しかし、これから若い世代にもクルマを買い続けてもらうためには、本当にかっこいいと思えるクルマ、可愛いと思えるクルマづくりはとても重要だ。若い人たちはSNSのような刹那的なコンテンツを好んで利用しているからこそ、真に可愛いものやかっこいいもの、面白いものには敏感に反応する。クルマは生まれた時からジェンダーレスな乗り物で、だからこそ誰が見ても美しい。私はそう思っている。これからも何かに媚びることのないデザインやクルマづくりを切に願う。

(ジャーナリストコラム 文:伊藤 梓)
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伊藤 梓(いとう あずさ):ライター
クルマ好きが高じて、グラフィックデザイナーという異業種から自動車雑誌の編集者へと転身。2018年からクルマの魅力をより広く伝えるために独立。自動車関連のライターのほか、イラストレーターとしても活動している。

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