メルセデスが技術を結集した本当に1000km走れる電気自動車・EQXXは技術のデパートになっている
掲載 更新 carview! 101
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今年のCES(毎年、米ラスベガスで開催される『コンシューマー・エレクトロニクス・ショー』)でメルセデス・ベンツが公開した「ヴィジョンEQXX」との最初の遭遇は昨年10月、触れることも出来なかったマットブラックのスリークなボディのプロトタイプで、その時からすでに「航続距離1000km」が目標に掲げられていた。
そして12月にCESに送られる直前にミュンヘンのシークレット・スタジオで再び対面、EQXXはシルバーボディの素晴らしいフィニッシュのショーカーへと変身し、運転席への搭乗も認められたのだ。今回は遅ればせながら解説を試みることにする。
最初に報告したいのは、EQXXの開発理念は環境保護や省資源だが、そこには究極のリソースと言える開発時間の短縮も含まれている。その実現のために、通常の開発グループの他にF1およびフォーミュラE、すなわちモータースポーツ関係者も参加。さらに後述する空力特性改善関係でのデジタル開発を進めた結果、このコンセプトモデルは18カ月という短期間で完成されている。
ルセデスEVの頂点「EQS」にいよいよAMG登場。Sクラス級の巨体が3.4秒で100キロまで加速…電池の減りは?ヴィジョンEQXXでもっとも注目すべき点は記録的な1000kmの航続距離を可能にするための大きな要素であるデザインだ。走行抵抗の62%を占めると言われる空気抵抗を減らすために、滑らかな曲面で覆われた全長4.84mの細長いボディは一見すると4ドアだが、実はリアドアはダミー、すなわち立派なリアシートが配置されるリア・コンパートメントに後席専用のドアはない。
デザインは2014年に発売された1リッターカー(100km/L以上走るという意味)の「VW XL1」(写真29-31枚目)や2015年のフランクフルトショーに登場した空力特性を追求するためにテールが延長する「コンセプトIAA」(写真32枚目)に非常に良く似ている。
ちなみに前者のCd値は0.19、後者は0.18だがEQXXは0.17に達している。そのために前面投影面積は2.2平方mとEQSの2.5平方mよりも小さく、ボディのリア部分は絞り込まれ、トレッドは前輪よりも50mm狭い。ホイールはカバーされていないが特殊なスリットによって過流を起こさせないような構造になっている。また同じ理由でリアエンドのアクティブディフューザーは80km/h以上になるとおよそ20cmせり出してリアエンドの空気の流れを整流する。このようにCd値は100分の1向上させると航続距離が2.5%伸びると計算されているほど大事な要素なのだ。
さらに重要なのは重量で次世代のコンパクトおよびミドルクラス用MMA(メルセデス モジュラー アーキテクチャー)をベースにした全長4.84mのEQXXは1750kgと「VW ID.3」よりも200kg軽く仕上がっている。
超高張力鋼板やアルミ、カーボンなどの採用はもちろんだが、それ以上に高容量のシリコンアノード(負極)を採用したCATL製リチウムイオン電池およそ200個のセルが詰まったカーボンユニットの総重量が495kgと、同社のフラッグシップBEVの「EQS」よりも30%軽量化されていることが大きな要素だ。ちなみに冷却システムは空冷で、負荷のかかる走行時など必要な時にだけフロントのシャッターを開けるクーリング・オン・デマンドを採用している。
インテリアはレザーなど動物系素材を一切使用しない再生可能素材、すなわち植物系を多く使いながらも快適で軽量、ハイエンドなデザインが与えられている。また、EQSでも採用されたダッシュボード幅一杯に広がるハイパースクリーンは省エネ仕様だ。
前述のシリコンアノードを採用した電池の容量はネットで144.4kWh、グロスでおよそ100kWh、システム電圧は920V。さらにルーフパネルには合計117個の太陽電池セルが内蔵されており、他のBEVに見られるように直接駆動系のバッテリーには充電されないが、天気が良ければ一日に最大で25kmの距離を稼ぐ計算になる。最高巡行速度140m/hで走るEQXXでもっとも驚異的なのは電力消費量で、100kmあたり10kWhとサブコンパクト・クラスの「ミニ クーパー SE」(15kWh)を下回っている。
このヴィジョンEQXXは一見すると未来的でチャレンジングな技術でいっぱいだが、メルセデス・ベンツのCEO、オーラ・ケレニウスはこれらの技術が徐々に市販車に採用されて行くことを約束している。また来年には1000kmの航続距離を実証するためのテストも計画されている。
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